これまでに申請者らは、7回膜貫通型受容体(GPCR)の一種であるLgr5(Leucine-rich repeat-containing G-protein coupled receptor 5)とその関連分子Reg4(増殖因子の一種:Regenerating islet derived protein 4)が協調して働くことで、大腸癌細胞に造腫瘍性を賦与していることを明らかにしてきた。Lgr5のリガンドは増殖因子R-spondinであることが知られているが、申請者らはR-spondin以外の新たなLgr5リガンドが存在していることを示唆する予備的な結果を得ていた。そこで本研究では、Lgr5新規リガンドとReg4受容体の同定に挑戦した。前年度の研究によって、GST-Lgr5-Ex(GSTを融合したLgr5の細胞外領域)の効率良い精製法を確立している。そこで本年度は、Glutathione-Sepharoseに結合したGST-Lgr5-Exをbaitとして、細胞培養液からアフィニティークロマトグラフィーによってLgr5に結合する蛋白質の探索を行った。様々な精製条件でLgr5-Exに特異的に結合する因子の同定を試みたが現在までに結合候補因子を見出すことはできていない。また、His-tag Reg4を固定化したカラムを用いて細胞抽出液からアフィニティークロマトグラフィーによって結合蛋白質を回収する従来法も行ったが、Reg4結合因子の同定までは到達できていない。これまでは比較的温和な条件で可溶化した細胞抽出液を実験に用いてきていることから、今後はコール酸などの強力な可溶化を検討していく必要があると考えられた。
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