本研究はDNAアプタマーを用いて、Smad転写複合体のheterogeneityを検出する手法の確立を目指している。 29年度はTGF-β依存的な転写活性化能をもつ内因性Smad結合配列のうちでAP-1結合配列を併せもつAP-1-m4配列を対象に、予備的な実験を行う予定であった。AP-1は単一のタンパク質ではなく、Jun、Fos、ATFファミリーの転写因子からなるヘテロ二量体であり、heterogeneityの検出に好適と考えられた。しかし、検討を進めるうちに、AP-1-m4配列のTGF-β依存的転写活性化はAP-1の過剰発現では増強されないことが明らかになった。 そこで、次年度の計画を一部、前倒しして活性型Smad複合体結合二本鎖DNA配列である3xSBE配列を用いてDNAアプタマー収集の条件設定を進めた。TGF-βで1時間刺激したマウス正常乳腺上皮細胞NMuMG細胞の核抽出液を3XSBE配列と混合後、洗浄し、3XSBE配列とSmadタンパク質の複合体を調製した。これと40ヌクレオチドのランダム配列をもつ一本鎖DNAライブラリーを混合し、結合するDNA一本鎖を回収した。DNA一本鎖を増幅後、同様の操作を4回繰り返すことにより、高度に濃縮されたDNA配列を得て、次世代シークエンサーで配列決定した。得られた配列はG-richという共通点があったが、共通の二次構造は認められなかった。 実験手法の問題点を確認して至適化を行ったので、今後は、不活性型Smad複合体結合二本鎖DNA配列も用いて、活性型Smad複合体と不活性型Smad複合体を識別するDNAアプタマーを探索する体制を整えることができた。
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