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2017 年度 実施状況報告書

mTOR栄養シグナルを標的とした老化・がん化制御

研究課題

研究課題/領域番号 17K19596
研究機関大阪大学

研究代表者

岡田 雅人  大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10177058)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワードmTOR / 細胞老化 / がん / 阻害剤 / FRET / BRET
研究実績の概要

がん細胞の成長や代謝制御を担う主要なシグナル分子であるmTORC1に注目して、その活性をコントロールすることにより細胞老化やがん発症を制御する全く新しい薬剤の開発を目的とした研究を行った。具体的には、mTORC1の活性制御因子であるRagulatorとRagA GTPaseの分子構造をもとに、既存のmTORC1阻害剤とは作用機作の異なるmTORC1阻害剤の開発に向けた研究を行った。
1)mTORC1の活性制御機構の分子基盤の解明:本年度は、RagulatorとRagA/CのRoadblock domain(RD)との7者複合体の結晶構造解析に成功した(Nat. Commun)。現在、その成果をさらに発展させて、GTP結合ドメイン(GTP-BD)を含む完全長のRagA/Cとの複合体の解析を試みている。また、その複合体とmTORC1との相互作用のクライオ電子顕微鏡解析の準備を進めている。
2)mTORC1の活性制御に関わる新たな因子の同定:栄養素(主にアミノ酸)に依存したmTORC1活性化には様々な因子が関わることが報告されているが、その実体は未解明のままである。そこで、上記の構造解析に用いた精製タンパク質、およびタグを付加して細胞に発現させたRauglatorに結合する分子を質量分析計にて解析した。その結果、既知の制御分子に加えて新たな候補分子を同定した。
3)mTORC1の活性抑制剤のスクリーニング:上記の複合体の構造解析から得られるRagulatorとRagA/Cの相互作用の分子情報に基づいて、まず、相互作用を簡便に検出できるin vitroスクリーニング系を構築するために、p18およびRagAにCFPおよびYFPの誘導体を融合させたFRETプローブを作製した。また、mTORC1の活性を直接検出するFRETおよびBRETプローブを導入し、mTORC1の活性抑制剤のスクリーニング系の作製を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、RagulatorとRagA/CのRoadblock domain(RD)との7者複合体の結晶構造解析に成功し、RagulatorとRagA/Cの相互作用の分子情報を得ることが出来た。現在、全長RagA/Cを含む複合体の全容構造の解明をめざして結晶化条件の検討を進めている段階にある。また、Rauglatorに結合する新たな分子のさらなる探索を現在も進めている。これらの情報をもとに、RagulatorとRagA/Cの相互作用、およびmTORC1活性を阻害する薬剤スクリーニング系の構築をFRETおよびBRETプローブの開発を通して進めている。

今後の研究の推進方策

全長RagA/Cを含む複合体の結晶化がきわめて困難な状況にあるため、活性状態を固定した種々の変異体を用いた新たな試みを行う予定である。Rauglatorに結合する新たな分子については、特にRagulatorの機能欠損細胞で見られるリソソームの形成や輸送不全という現象に関連する分子に的を絞ってさらに解析する予定である。薬剤スクリーニング系が構築できたら、まずは相互作用に重要なペプチドに焦点をあてたスクリーニングを速やかに開始する予定である。

次年度使用額が生じた理由

若干の残額があったが、2年間連続して行う研究のため、次年度分と合わせて使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Rheb localized on the Golgi membrane activates lysosome-localized mTORC1 at the Golgi-lysosome contact site.2018

    • 著者名/発表者名
      Hao F, Kondo K, Itoh T, Ikari S, Nada S, Okada M, Noda T
    • 雑誌名

      J Cell Sci.

      巻: 131 ページ: 208017

    • DOI

      10.1242/jcs.208017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural basis for the assembly of the Ragulator-Rag GTPase complex.2017

    • 著者名/発表者名
      Yonehara R, Nada S, Nakai T, Nakai M, Kitamura A, Ogawa A, Nakatsumi H, Nakayama KI, Li S, Standley DM, Yamashita E, Nakagawa A, Okada M.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 8 ページ: 1625

    • DOI

      10.1038/s41467-017-01762-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Lamtor1 Is Critically Required for CD4+ T Cell Proliferation and Regulatory T Cell Suppressive Function.2017

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa T, Kimura T, Nada S, Okuno T, Ito D, Kang S, Nojima S, Yamashita K, Nakatani T, Hayama Y, Kato Y, Kinehara Y, Nishide M, Mikami N, Koyama S, Takamatsu H, Okuzaki D, Ohkura N, Sakaguchi S, Okada M, Kumanogoh A.
    • 雑誌名

      J Immunol.

      巻: 199 ページ: 2008-2019

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1700157

    • 査読あり
  • [学会発表] リソソーム膜上でのmTORC1栄養シグナルの制御機構2018

    • 著者名/発表者名
      岡田雅人
    • 学会等名
      大阪大学蛋白質研究所セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] The structural basis for the assembly of the Ragulator-RagGTPase complex2018

    • 著者名/発表者名
      中井 昌弘、米原 涼、名田 茂之、中井 友和、中川 敦史、岡田 雅人
    • 学会等名
      新学術領域研究「数理シグナル」第2回公開シンポジウム
  • [学会発表] mTORC1栄養シグナル制御の分子基盤解析2017

    • 著者名/発表者名
      岡田雅人
    • 学会等名
      新学術領域研究「数理シグナル」領域推進会議
  • [学会発表] リソソーム膜上におけるmTORC1シグナルの制御機構2017

    • 著者名/発表者名
      岡田雅人
    • 学会等名
      第四回バイオシグナル研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Ragulatorの構造とRagとの複合体形成機構2017

    • 著者名/発表者名
      名田 茂之、米原 涼、中井 昌弘、北村 彩佳、小川 輝、山下 栄樹、中川 敦史、岡田 雅人
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会

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公開日: 2018-12-17  

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