研究課題
がん幹細胞は,大量のがん細胞を産み出す能力と抗がん剤抵抗性を併せ持つ細胞であり,抗がん剤治療を逃れたがん幹細胞は再発を引き起す原因となる.研究代表者は,慢性骨髄性白血病(CML)のマウスモデルより純化したCMLのがん幹細胞(CML幹細胞)のメタボローム解析を行い,二分子のアミノ酸が結合したジペプチド種を吸収していることを発見した.本研究では,ジペプチドトランスポーターSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスを用いて,生体内でのCML幹細胞の制御におけるジペプチド吸収の意義を明らかにすることを目的とする研究を実施した.米国ミシガン大学David Smith博士よりSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスの供与を受け,テトラサイクリン制御型CMLモデルマウスとして知られているScl-tTAマウスとtetO-BCRABL1マウスとの交配を行なって,Slc15A2欠損 CMLマウスモデルを樹立した.まず,Slc15A2欠損CMLマウスにおけるCML幹細胞の解析を行なった結果,野生型,及びSlc15A2欠損CMLマウスの間でCML幹細胞の頻度に有意差は見られなかった.しかし,Slc15A2欠損CML幹細胞における遺伝子発現をRNAシークエンスによって解析した結果,CD33を高発現していることが判明した.CD33は造血幹細胞では発現していないが,顆粒球マクロファージ前駆細胞(Granulocyte-macrophage progenitor)で発現していることが知られている.すなわち,Slc15A2欠損によるジペプチド吸収の低下はCML幹細胞からGMP様CML細胞への分化を促進している可能性が示唆された.今後,当該成果を基盤に,Slc15A2阻害剤セファドロキシルによる分化誘導,および抗CD33抗体治療薬とセファドロキシルとの併用による新規CML幹細胞の治療法の研究へと発展させる計画である.
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Leukemia
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10.1038/s41375-018-0321-8.