研究課題
挑戦的研究(萌芽)
研究代表者は,慢性骨髄性白血病(CML)のマウスモデルを用いて,二分子のアミノ酸からなるジペプチドの吸収がCMLのがん幹細胞(CML幹細胞)の維持に重要な役割を担うことを報告した.本研究ではジペプチドトランスポータSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスを用いて,生体内でのCML幹細胞の維持におけるジペプチド吸収の役割を解析した.RNAシークエンスによる遺伝子発現解析の結果, Slc15A2欠損によるジペプチド吸収の低下はCML幹細胞の分化を促進していることが明らかとなった.
幹細胞生物学
がん幹細胞はがん細胞を産み出す能力と抗がん剤抵抗性を併せ持つ細胞であり,抗がん剤治療を逃れたがん幹細胞は再発を引き起す原因となる.研究代表者は,CML幹細胞はジペプチドを吸収して生存していることを報告したが,その生物学的意義は不明であった.本研究では,ジペプチド吸収できないSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスを用いることで,ジペプチドの吸収は生体内でのCML幹細胞の未分化性の維持に重要な役割を担うことを解明した.本成果はSlc15A2阻害剤による分化誘導など,CML幹細胞を標的とする新しいCML根治療法を開発するための医薬基盤となることが期待される.