研究課題/領域番号 |
17K19605
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 雅史 九州大学, 医学研究院, 教授 (30372741)
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研究分担者 |
前山 良 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10611668)
江上 拓哉 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507787)
中山 功一 佐賀大学, 医学部, 教授 (50420609)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
当間 宏樹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80437780)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / 3Dバイオプリンター / 微小環境 |
研究実績の概要 |
細胞の性質は培養条件に大きな影響を受けるため、近年癌の研究においてより生体内に近い環境を作り出す目的で細胞集塊をゲル内で培養するスフェロイドやゲル内で腺管構造を構築させるオルガノイドが使用されるようになりつつあるが、これらの3次元培養においても細胞外基質は人工的なものであり、その点で生体内とは大きく異なる。本研究の目的は3Dバイオプリンターを用いて膵癌微小環境をin vitroで再現し膵癌の浸潤、転移のメカニズムを明らかにすることである。本研究ではスフェロイドをプログラムに沿って剣山に配置していく3Dバイオプリンター(Regenova)を使用した。Regenovaでは剣山が支持体となるため、人工的な足場材料を必要としないことが特長である。我々は膵癌切除組織から初代培養で樹立した癌関連線維芽細胞で作成したスフェロイドをRegenovaで積層することで膵癌の間質を模倣した立体的な構造体を作成することに成功した。癌関連線維芽細胞に膵癌細胞を混ぜて作成したすスフェロイドでも構造体を作成することができた。また、癌関連線維芽細胞のみで作成した構造体と癌関連線維芽細胞と膵癌細胞を混合した構造体を接合させた状態で培養した。このモデルでは膵癌細胞に蛍光色素を導入することで膵癌細胞が間質を浸潤する様子を観察することができた。また、同時に膵癌細胞のオルガノイドの作成にも成功し、癌関連線維芽細胞と共培養することで癌関連線維芽細胞が膵癌細胞の浸潤を促進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
癌関連線維芽細胞のみでは安定した構造体を作成することができた。しかし、膵癌細胞を混合すると膵癌細胞の方が増殖能が高く、経時的に膵癌細胞が優勢となり、構造体の強度が低下するという課題が見出された。今後はこの問題を解決するべく培養条件や用いる細胞の種類や割合等について検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞の存在下でも構造体の強度を長期間保つことができるように培養条件や用いる細胞の種類や割合等について検討する。また、構造体の癌細胞を観察するために癌細胞に蛍光色素を導入して共焦点顕微鏡で観察を行っているが、通常の共焦点顕微鏡では深部の観察は難しい。そのため内部構造を経時的に観察するためには多光子励起顕微鏡が必要であり、その使用を検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はやや遅れていて培養条件や用いる細胞の種類や割合の検討を行う必要があったため。 次年度は培養用試薬・器具、抗体等の消耗品に使用する予定である。
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