研究課題
従来のディッシュ上での2D培養よりもより生体内に近い細胞培養モデルとして近年スフェロイドやオルガノイドが用いられているが、それらにおいても構造物のサイズや細胞の構成において生体内の環境とは大きく異なっている。本研究の目的は癌細胞と癌微小環境中の他の細胞成分を組み合わせたスフェロイドを剣山上に配置する3Dバイオプリンターを用いて膵癌微小環境をin vitroでより忠実に再現し膵癌の浸潤、転移のメカニズムを明らかにすることである。癌細胞のみでは強固なスフェロイドを作成することは困難であり、膵癌組織中で間質の増生に主に関与している癌関連線維芽細胞を混ぜ、1週間以上培養を続けることで3Dバイオプリンターでの操作に耐えうる強固なスフェロイドを作成することができた。しかし、3Dバイオプリンターで作成した構造体は培養期間が長期に及ぶほど癌細胞が優勢となり構造体の強度が極端に低下した。また、GFPを導入した癌細胞を含む構造体と癌細胞を含まない構造体を接合した構造体を経時的に観察したところ、癌細胞は癌細胞を含まない構造体の方向に浸潤したが、断面の観察では癌細胞は構造体の表面を這って浸潤しており、間質への浸潤はみられなかった。オルガノイドと癌関連線維芽細胞をゲル内で3D共培養する実験においては癌関連線維芽細胞がオルガノイドの基底膜を破壊することにより癌細胞の周囲への浸潤を促進することが明らかになり、この作用は癌関連線維芽細胞のMT1MMPを阻害することにより抑制された。
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Cancer Lett.
巻: 444 ページ: 70-81
10.1016/j.canlet.2018.12.005