研究課題/領域番号 |
17K19610
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松岡 雅雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (10244138)
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研究分担者 |
安永 純一朗 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (40362404)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | HTLV-1 / 血液幹細胞 / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)はCD4陽性Tリンパ球の悪性腫瘍である成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を引き起こす。HTLV-1感染は主にCD4陽性T細胞に認められるが、そのレセプターはグルコーストランスポーターGLUT-1であり様々な細胞に感染しうる。しかし、HTLV-1が血液幹細胞に感染することは否定されてきた。我々は次世代シークエンサーを用いて同一感染者の異なる細胞系列に同じHTLV-1プロウイルス組み込み部位を検出しHTLV-1が血液幹細胞に感染していることを見出した。さらにキャリアではHAM患者に比して幹細胞由来の感染T細胞が末梢血中に多く検出され、病態との関連が示唆された。本研究は、血液幹細胞へのHTLV-1感染の病態における意義、ATL発症との関連を明らかにすることを目的としており、HTLV-1研究に新たな展開をもたらすと考える。 HAM患者より分離した単球を逆転写酵素阻害薬存在下で樹状細胞へ分化させ、レポーターを有するJurkat細胞と共培養して、実際にHTLV-1新規感染が起こるかを解析した。共培養によりTOMATO色素発現細胞の増加を認め、インテグラーゼ阻害薬に添加により、その増加が抑制されたことから、感染した単球から分化した樹状細胞から新規感染が起こることが明らかになった。このことから、感染した血液幹細胞から分化した単球は生体内で新規感染を起こしていることが示唆された。 HAM患者の末梢血より好中球を分離してHTLV-1プロウイルス組み込み部位を次世代シークエンサーで解析した。このデータを1年前のリンパ球、好中球、単球のデータと比較して約半数の組み込み部位が1年後にも存在することを見出した。これはHTLV-1感染血液幹細胞が生体内で持続的に存在することを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HTLV-1感染単球から分化した樹状細胞が実際に新規感染を起こすことを明らかにして血液幹細胞への感染が体内における感染拡大に寄与していることが示された。また、HTLV-1感染血液幹細胞が持続して存在することはATL発症にも関連する可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの次世代シークエンサーによる解析では解析数が十分ではなく、HTLV-1感染血液幹細胞由来の感染細胞の割合を低く評価している可能性がある。このためHTLV-1プロウイルスの組み込み部位をNextseqで解析して解析数を増やし、HTLV-1感染血液幹細胞に由来する感染細胞の割合をさらに正確に評価する。HTLV-1感染血液幹細胞に由来する感染細胞ではHTLV-1プロウイルスの組み込み部位は同一だが、T細胞受容体遺伝子の再構成が異なることが予想される。この解析はシングルセルでの解析が必要となるため、その解析系の確立を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に次世代シークエンサーで多くの検体を解析する必要があったため、研究費を繰り越している
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