研究課題
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)はCD4陽性Tリンパ球の悪性腫瘍である成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)を引き起こす。HTLV-1感染は主にCD4陽性T細胞に認められるが、そのレセプターはグルコーストランスポーターGLUT-1であり様々な細胞に感染しうる。しかし、HTLV-1が血液幹細胞に感染することは否定されてきた。我々は次世代シークエンサーを用いて同一感染者の異なる細胞系列に同じHTLV-1プロウイルス組み込み部位を検出しHTLV-1が血液幹細胞に感染していることを見出した。さらにキャリアではHAM患者に比して幹細胞由来の感染T細胞が末梢血中に多く検出され、病態との関連が示唆された。本研究は、血液幹細胞へのHTLV-1感染の病態における意義、ATL発症との関連を明らかにすることを目的としており、HTLV-1研究に新たな展開をもたらすと考える。HTLV-1感染細胞の中で異なる研究系で同じ組み込み部位を有する細胞は感染した血液幹細胞に由来すると仮定して、その割合を検討した。Bリンパ球、単球、好中球では40-90%の感染細胞が感染した血液幹細胞に由来することが示唆された。また、感染CD4陽性Tリンパ球においても16-35%が感染血液幹細胞に由来することが示唆された。他の血球系と比較して、その割合は低くCD4陽性Tリンパ球では末梢での新規感染に由来する感染細胞が多いことが示唆された。今後、ATLが感染した血液幹細胞に由来するか、もしそうであれば、どの位の割合で存在するかを明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
HTLV-1感染細胞の中で異なる研究系で同じ組み込み部位を有する細胞は感染した血液幹細胞に由来すると仮定して、その割合を検討した。Bリンパ球、単球、好中球では40-90%の感染細胞が感染した血液幹細胞に由来することが示唆された。また、感染CD4陽性Tリンパ球においても16-35%が感染血液幹細胞に由来することが示唆された。他の研究と比較して、その割合は低くCD4陽性Tリンパ球では末梢での新規感染に由来する感染細胞が多いことが示唆された。
HTLV-1感染血液幹細胞に由来する感染細胞ではHTLV-1プロウイルスの組み込み部位は同一だが、T細胞受容体遺伝子の再構成が異なると考えられる。シングルセル解析により、そのような細胞がどのくらい存在するかを明らかにする。また、ATL症例で組み込み部位とT細胞受容体遺伝子再構成を同時に解析することにより、ATLが感染した血液幹細胞に由来するかを明らかにする。
HTLV-1に感染した血液幹細胞に由来するATLが存在するのか、存在するとすればどのくらいの頻度か詳細に解析する必要が生じたため、次年度の解析を継続することとなった。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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