非コードRNAであるマイクロRNA(miRNA)は卵巣癌をふくむ数々の癌でその関与が解析されてきているが、miRNA以外の小分子RNAはあまり研究されてきていない。また、The Cancer Genome Atlasにより卵巣癌のDNAコピー数異常、メッセンジャーRNA(mRNA)、miRNAの個々の解析は行われたが、非コードRNAとmRNAの卵巣癌における包括的、有機的なネットワーク解明は未だ充分ではない。本研究において卵巣漿液性癌 5検体と正常卵巣 2検体を用いて全トランスクリプトーム解析(mRNA-seq)および全小分子RNA解析(miRNA-seq)を行った。その結果20-23塩基長のmiRNAは卵巣癌と正常卵巣の間で発現パターンが明らかに異なっていた。26-34塩基長のPiwi-interacting RNA(piRNA)は生殖細胞に特異的に発現する小分子RNAとされるが、piRNAは卵巣癌において正常卵巣と発現パターンが類似しているものと異なっているものがあることがわかった。そして小分子RNAが作用している可能性のあるmRNAを相補的配列と発現から統合的に解析を行うことにより、卵巣癌に特異的な10個のmiRNA-mRNAネットワーク、5個のpiRNA-mRNAネットワークを同定した。同定した15個の小分子RNAを阻害することにより、卵巣癌の増殖および浸潤に関与する小分子RNAを同定した。また、PIWI蛋白のうち卵巣癌の浸潤および転移に関与するPIWI蛋白を明らかにした。同定したPIWI蛋白のノックダウンおよび強制発現を行った卵巣癌細胞株を用いて機能解析実験を行った。
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