研究実績の概要 |
本研究では、食道胃接合部腺癌には(1)バレット食道由来のもの、(2)胃噴門上皮を由来のもの、に大別されるとの仮説を、網羅的に解析することである。ゲノム全体のメチル化の指標とされるLINE-1メチル化レベルの検討を、申請時N=160であったが、さらに症例数を増やし、N=353で解析した。Siewert type別に検討したところ、やはり、食道側に存在するSiewert type I, 食道と胃の間に存在するtype IIが、胃側に主に占居するtype IIIよりも有意にLINE-1低メチル化の影響を受けていることが判明した(P<0.05)。またバレット食道の併存の有無での検討では、やはりバレット食道ありの腫瘍において有意にLINE-1低メチル化を認めた。Molecular subtype別の検討をおこなったところ、MSI-highやEBV関連の食道胃接合部癌ではやはりLINE-1は高メチル化状態を認め、LINE-1自体が本疾患でのゲノムワイドなメチル化の指標となることが再確認された。 さらに、LINE-1メチル化状況を4分割し予後解析を行ったところ、LINE-1メチル化が高いものは予後良好、低いものになるにつれて良好曲線は下になる、メチル化レベル順に4つの予後曲線はそのメチル化レベルとパラレルに相関することが判明した。以上より、本疾患のメチル化レベルは、予後と相関することが多数例を用いた検討で明らかとなった。 また、CHFR, MGMT, CDKN2Aのメチル化レベルの測定をMethylight-PCR技術を用いて測定可能かどうかの予備実験を継続中であり、どれも問題なく測定できることこれまでかくにんしている。これらは食道胃接合部腺癌のCpG Methlylator phenotypeとしての有用性が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
凍結組織がある術前化学療法を施行していない症例において、LINE-1メチル化レベルの検討と行い、高メチル化群3例、低メチル化群3例を選出し、網羅的メチル化解析を6例で検討する。それによって得られたデータから統計解析上指標となるような有意なマーカーを検索する。同時に、Nature 2017に発表されたTCGAの7312のCpGアイランドのメチルレベルの検討から、CHFR, MGMT, CDKN2A,APC, ITHAV, RUNX1, SMARCA4, SMAD4, FHIT, WWOX, CD44, ERBB2, MYC, VEGFAのメチル化レベルをMethylight-PCR技術を用いて追加解析し、上記により我々が選んだCpGマーカーとTCGAのマーカーの優越に関して比較検討を行う。TCGAのデータに関しては、BipPortalから得る。また不明なものに関しては、共同研究者であり、TCGA消化器癌のトップであるDana-Farber Cancer InstituteのDr. Adam J Bassから情報提供してもらう予定である。
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