研究実績の概要 |
昨年度の検討で予後不良と相関したLINE-1低メチル化の悪性度に及ぼす原因を検討するために、LINE-1メチル化レベルを四分位点で4群(LINE-1メチル化レベルが低いものから順にQ1, Q2, Q3, Q4と定義)に分類し詳細に検討した。Q1群は有意に男性が多く(Q1, Q2, Q3, Q4順に 92%, 86%, 78%, 81%, P=0.047)、病理組織型分類であるLauren分類でintestinal 型が多かったが(84%, 80%, 76%, 62%, P=0.0041)、TNM Stageなどには有意な差を見いだせなかった。4群間の再発部位に有意な特徴を見いだせなかった。また腫瘍免疫の観点から、4群間で腫瘍細胞のPD-L1の発現状態には差を見いだせないものの、最も低メチル化を示したQ1群では腫瘍内部に浸潤したCD8陽性細胞数が最も低く、腫瘍辺縁に浸潤したFOXP3陽性細胞数が最も高値を示した。さらに興味深いことにTP53 IHC でまったく染色されないnull型の変異や、シーケンス上truncationタイプのTPP53変異がQ1群で有意に高頻度に検出され(いずれもP<0.0001)、Ki-67 indexも有意に高いことから、低メチル化群のがん細胞はChromosomal instabilityが高く、細胞周期関連の異常が高悪性度の原因ではないかと推測される。CHFR, MGMT, CDKN2Aのメチル化レベルの測定をMethylight-PCR技術を用いて測定したところ、LINE-1との相関はCDKN2AとCHFRで良好に相関し(P<0.0001)、これらがん抑制遺伝子の関与が強く示唆された。低メチル化群への治療としてはHER2 IHC強陽性のものが比較的頻度がたかく(17%,18%,12%,6%, P=0.12)、トラスツズマブの可能性が考察された。
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