研究実績の概要 |
昨年度までのマルチオミクス解析の結果で、同一細胞株でも多様性が認められた。細胞の状態、特性に起因するのか否か、オートファジーの活性化に対する表現型の差異によるものなのかについて、再度試料を準備して解析した。飢餓応答時(栄養欠乏培地:アミノ酸とグルコース欠乏させる栄養飢餓培地を使用する)と非飢餓時の細胞株を作製した。実験に用いた細胞は、RAS、BRAF、TP53の変異の有無が異なる4種の大腸がん細胞株(HT-29、SW480、HCT116、DLD-1)であり、それらを飢餓応答時の状態を持続させ、飢餓耐性があるがん細胞とないがん細胞を細胞死、形態変化の視点から絞った。細胞死が顕著な細胞株と殆どない細胞株の代表として、それぞれHCT116とHT-29を選抜した。多様性を解消した試料を用いて、マルチオミクス解析としてChIP-seqを行い、ヒストン修飾(H3K4me3、H3K9me2、H3K27me3)を指標とした。特徴的なクロマチン構造の変化を見出した。 オートファジーによるがん細胞の生存、細胞死の機構の解明を細胞周期の状態から解明するために、細胞周期を測定した。その結果、HCT116とHT-29の間ではG1/S期の細胞集団が増えていることが観察された。そこでより詳細に細胞周期について解析するために、Fucci導入細胞株を作製した。mCherry-hCdt1(O,Q)導入細胞をAriaでPE-Tx-RED, positive population sortingした。そして、10cm/dishまでそれらの細胞が増えたらmVeanus-hGeminin(M,N)を導入した。これらの導入細胞をAriaでPE-Tx-RED,FITC double positive populationについてsortingを行った。オートファジーを誘導すると、がん細胞株はG1/Sで停止することが蛍光を指標としても観察された。 乳がん細胞株について、DNAメチル化状態を網羅的に解析するためにRRBS (Reduced Representation Bisulfite Sequencing)法による解析を行い、オートファジーの活性化に寄与する可能性のある候補遺伝子のメチル化状態を解析した。
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