研究課題/領域番号 |
17K19629
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和多 和宏 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70451408)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 吃音 / 音声コミュニケーション障害 / 大脳基底核 / 発声学習 / 学習臨界期 / 発声パターン / 運動異常 / ソングバード |
研究実績の概要 |
会話によるコミュニケーションは、人間として生きていく上で重要な行為である。しかし、思考したことを言葉として表出できない、会話が流暢にできないといった障害がある。発話コミュニケーション障害と呼ばれるものである。その一つに「吃音(どもり stuttering)」がある。しかし、現在吃音の発症原因は明らかにされておらず、治療方法も十分に整備されていない。発話コミュニケーション障害「吃音」の動物モデルを用いた吃音発症の神経メカニズムの解明を目標に研究を進めている。特に、神経回路・細胞・遺伝子レベルで、吃音発症の原因解明を目指し、発声学習時の大脳基底核ループ経路から発声運動制御経路への出力異常にあるとする『大脳基底核ループ出力異常』仮説を実験的に検証すべく、音声発声学習能をもつ鳴禽類ソングバードを実験動物モデルとして用いて、以下の研究を進めている。 (1)GABAergic神経細胞特異的プロモーターによるアデノ随伴ウイルス(AAV)発現系とCre-Flexシステムによる細胞死人為的誘導技術を用いた研究を進めた。介在ニューロン特異的な細胞死を成鳥の歌神経核Area Xで起こし、その後、音素配列の異常繰り返しが起こることを見出した。pan-cell typeプロモーターのCMVプロモーターを用いた実験を施行しても、同様の結果を得れない。これらのことから、大脳基底核内の抑制性神経細胞の減少が発声運動パターンの異常繰り返しを誘導することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していたよりも重篤な行動異常を示す実験系を確立しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2点の研究を進めていく予定にしている。 (1)GABA、及びドーパミン 受容体阻害剤投与による音声配列繰り返しが誘導されるかを検証する。 (2)発声学習臨界期前の幼若個体に介在ニューロン特異的な細胞死を誘導し、その後の発声学習発達への影響を検証する。
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