研究課題
記憶の固定化の神経回路メカニズムの詳細は不明であるが、一つ、動物が静止状態や睡眠中にあるときに観察されるreplay現象が関与すると考えられている。本研究では、固定化先として有力候補である大脳皮質領域の前帯状皮質(ACC)のどの細胞種に記憶が固定化されていくかを、メゾスケールからシナプスレベルまでの範囲で明らかにしていく。固定化に関連したACCのシナプスを同定するために、抑制性回避学習をマウスに行わせ、30分後と35日後それぞれ別のマウスから脳スライスを摘出し、パッチクランプ法によりACCの2/3層領域の興奮性神経細胞の活動を記録した。学習後すぐにはAMPA/NMDA比は変化しなかったが、35日以降ではAMPA電流が大きくなった。一方、海馬では学習後すぐにAMPA電流は大きくなることから、記憶の固定化先としてACCに転送されている可能性が高い。次に、興奮性細胞特異的にカルシウム感受性蛍光蛋白質G-CaMP7を発現するCaMKIIα-tTA x TRE-G-CaMP7マウスを用い、ACCの第2/3層の興奮性神経細胞の活動をカルシウムイメージングにより記録した。学習初期では場所細胞様活動は見られないが、数日後に場所特異的な活動やcontext依存的に活動する細胞が現れ、安定していくことがわかった。一方、海馬では、場所細胞はすぐに形成されるがわかった。今後、海馬で見られないcontext依存的な活動を示す細胞が海馬から直接入力が入るのか、また、どこへ出力していくか明らかにしていく。
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