研究課題/領域番号 |
17K19638
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐野 良威 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 助教 (90415175)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 記憶 / 学習 / セルアッセンブリ / 領域間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究課題は記憶保存細胞の形成における領域間相互作用を明らかとすることを目的としている。平成29年度は学習強度の異なる味覚嫌悪学習課題を確立し、記憶想起の度合いにより活動するセルアッセンブリをc-fosタンパク質を指標に解析した。その結果、弱学習群と強学習群において活動するセルアッセンブリのサイズは解析領域において有意な差は観察されなかった。一方、脳領域間の機能的相互作用を解析したところ、弱学習群に比べ強学習群で島皮質-扁桃体間の機能的結合が強くなることを示唆する結果を得た。また、Cre-loxPおよびTetシステムを用いて、疎らな細胞集団に任意の遺伝子を発現させる手法を確立した。これらの手法を用いて、島皮質の一部の神経細胞群にhM3Dq(リガンド部位改変型ヒトM3ムスカリン様アセチルコリン受容体)を発現させ、味覚嫌悪学習時にこれらの細胞群の活動性を上昇させた。その後、記憶想起テストを行いそのときに活動した細胞集団をc-fosタンパク質を指標に解析した。その結果、恐怖条件付け学習において学習時に活動性の高い扁桃体の細胞群に記憶がより選択的に取り込まれるというこれまでの知見と異なり、学習時に活動性を高めた神経細胞群とそうでない神経細胞群の間で、記憶想起時に活動する細胞の割合に有意な差は観察されなかった。また、味覚嫌悪学習課題における学習および記憶想起時の行動に対応した個々の神経細胞の活動様式を明らかとするため、脳内視微小蛍光顕微鏡を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、疎らな神経細胞の活動を操作する手法を確立し、学習時の興奮性により記憶想起を担う細胞群の形成が制御されるかどうか検証することを可能とし解析を一部進めることができた。そして、基礎的な解析から領域間の相互作用により記憶が強く形成されることを示唆する結果を得ることができた。また、脳内視微小蛍光顕微鏡も平成29年度中に完成させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、複数の脳領域で神経細胞の活動性を学習時に操作したときに、それらの細胞群が記憶想起時に活動する細胞群となるかどうかを検証することから、記憶保存細胞の形成における領域間相互作用を明らかとする。また、平成29年度に作製した微小蛍光顕微鏡を用いて、味覚嫌悪学習課題における学習および記憶想起時の行動に対応した個々の神経細胞の活動様式を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳内視微小蛍光顕微鏡の作製後、脳深部蛍光イメージングおよび解析において、いくつかの問題点が明らかとなり、これらを解決するまでの間、解析用の高機能パソコンおよびレンズ等の高額の機器および消耗品類の購入を待っていたため差額が生じた。昨年度に購入予定であったこれらの物品を購入し、それらを除いた今年度分予算は当初の実験計画に基づき使用する。
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