研究課題/領域番号 |
17K19639
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
阿部 高志 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (00549644)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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キーワード | 睡眠 / 眠気 / 覚醒度 / 精神運動ヴィジランス課題 / 脳波 |
研究実績の概要 |
今年度は下記2点を実施した。 (1)取得済みデータ(Abe et al., 2020, Sleep)を用いた解析を行った。この実験では,被験者16名が38時間の連続覚醒中に20分間の精神運動ヴィジランス課題(Psychomotor Vigilance Test: PVT)を2時間ごとに実施した。PVT中に取得した反応速度(覚醒度指標のひとつ)の周波数解析を行い,断眠が覚醒度のゆらぎに及ぼす効果を検討した。その結果,全帯域パワ,Slow8帯域(0.0005-0.0014Hz)パワ,Slow7帯域(0.0014-0.0037Hz)パワ,Slow6帯域(0.0037-0.0102Hz)パワ,Slow5帯域(0.0102-0.0276Hz)パワに時系列変化を認め,ベースライン(起床後16時間まで)と比較して,全帯域パワ,Slow6,Slow5は起床後20時間後に,Slow8は28,32,34時間後に,Slow7は18,22-28,32-36時間後に増大していた。次にこれらの各帯域パワがランダムノイズの増加に由来しないことを確認するため,オリジナル時系列の順序をランダムに1000回シャッフルした時系列(surrogate系列)と比較した。その結果,全帯域パワは起床から20-26時間後および30-34時間後に,slow8およびslow7は全時間帯で,slow6は起床から24-26時間と32時間後に,surrogate系列よりも有意に増大していた。この結果は,PVTの反応速度のゆらぎにおけるslow8およびslow7は断眠と関係なく周期的に変動する成分であるが,slow6は断眠によって生じる律動性成分であるを示している。 (2)超低周波数の周期をより安定して計測するためにはより長期間の時系列データを必要とする。そこで,新たに断眠実験を計画し,データ取得を行った(UMIN000040118)。睡眠実験室での断眠負荷もしくは8時間睡眠の前後に40分間のPVTを負荷した。30名のID登録を行ったが,5名が途中辞退した。最終的に25名の被験者(25.5+/-3.4歳[21-39歳],女性13名)からのデータ取得を完了した。現在,本データの解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍によってデータ取得が遅れたものの,過去の所属機関で取得したデータを使用するための手続きを進め,解析を実施した。また,予定していた実験データの取得を完了できた。現在,データ解析を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,4時間の睡眠制限実験,38時間の連続覚醒実験によって得られた知見を論文化するとともに,今年度に取得したデータの解析を進め,論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ取得のみではなく論文報告も行い,本研究課題を終了する予定であったが,コロナ禍によって実験実施スケジュールが大幅に遅延し,データ取得は完遂したものの,論文報告に至らなかったため,当初予定していた論文投稿のための予算を繰り越した。2021年度は繰越予算を論文投稿のために使用する。
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