• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

骨髄造血と腸内フローラのクロストーク

研究課題

研究課題/領域番号 17K19641
研究機関北海道大学

研究代表者

豊嶋 崇徳  北海道大学, 医学研究院, 教授 (40284096)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2020-03-31
キーワード造血 / 腸内細菌 / G-CSF / IL-17 / 好中球
研究実績の概要

緊急骨髄好中球造血のモデルとして、致死量の全身放射線照射で造血細胞を除去したレシピエントマウス(B6-CD45.2)に、コンジェニックドナー(B6-CD45.1)の骨髄から純化したLineage- Sca-1+ c-kit+細胞(LSK細胞)を移植した。前年までの研究によって、レシピエントの産生するIL-17Aの好中球生着に重要であること、またこれに腸内細菌叢が密接に関わっていることが明らかになったので、今年度はそのメカニズムについて更なる検討を行った。レシピエントの主要なIL-17A産生細胞を同定するため、T細胞の欠損したRAG-/-マウスをレシピエントとして移植したところ、IL-17A産生が低下、好中球生着が遅延した。移植時に野生型T細胞を同時投与すると生着は回復し、T細胞がIL-17Aの主要な産生細胞であることが示唆された。IL-17A-/-マウスでは移植後に、骨髄系前駆細胞であるGMP細胞のレベルから低下がみられた。IL-17Aのシグナルが入らないIL-17RC-/-マウスのLSK細胞を移植しても好中球の生着が遅延し、IL-17Aはドナーの骨髄系前駆細胞に作用する可能性が示唆された。野生型レシピエントマウスへの移植後には肺のalpha/beta及びgamma/delta T細胞のIL-17Aの発現が著明に上昇していたが、抗菌剤の投与によりそのIL-17産生は有意に抑制された。以上の結果から、腸内細菌叢の存在下においてのみ、造血不全時にT細胞からIL-17Aが産生され、骨髄系前駆細胞レベルに作用し、好中球造血が促進されるものと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究計画はほぼ順調に実行でき、成果を得ることができた。造血不全時に、腸内細菌―T細胞の関連によって緊急的好中球造血が支持されるという知見は本研究で初めて示されたもので非常に興味深い。このような知見のメカニズムにかなり迫ることができた点で研究の進捗は順調であると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後のメインテーマは、腸内細菌叢のシグナルがどのようにT細胞に繋がるかである。現在、2つの経路を考えており、一つは腸管のマクロファージなどのIL-22、IL-23産生を介してTh17細胞を誘導する経路、もう一つは腸上皮内T細胞がダイレクトに細菌シグナルを感知する経路である。腸組織よりT細胞やマクロファージを単離して、解析を進める予定である。細菌からのシグナルとしてはTLR系を想定し、MyD88-/-TRIF-/-マウス(大 阪大学医学研究科、免疫制御学、竹田潔教授より供与)を実験に用いる。また緊急造血のモデルとして、化学療法による骨髄抑制モデルにおいても研究し、結果の普遍性を確認する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Queensland institute of Medical Research(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      Queensland institute of Medical Research
  • [雑誌論文] Intestinal Lymphatic Endothelial Cells Produce R-Spondin32018

    • 著者名/発表者名
      Ogasawara Reiki、Hashimoto Daigo、Kimura Shunsuke、Hayase Eiko、Ara Takahide、Takahashi Shuichiro、Ohigashi Hiroyuki、Yoshioka Kosuke、Tateno Takahiro、Yokoyama Emi、Ebata Ko、Kondo Takeshi、Sugita Junichi、Onozawa Masahiro、Iwanaga Toshihiko、Teshima Takanori
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 10719~10728

    • DOI

      10.1038/s41598-018-29100-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The association between the incidence of intestinal graft-vs-host disease and antibiotic use after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation2018

    • 著者名/発表者名
      Hidaka Daisuke、Hayase Eiko、Shiratori Souichi、Hasegawa Yuta、Ishio Takashi、Tateno Takahiro、Okada Kohei、Goto Hideki、Sugita Junichi、Onozawa Masahiro、Nakagawa Masao、Kahata Kaoru、Endo Tomoyuki、Hashimoto Daigo、Teshima Takanori
    • 雑誌名

      Clinical Transplantation

      巻: 32 ページ: e13361~e13361

    • DOI

      10.1111/ctr.13361

    • 査読あり
  • [学会発表] Novel insights in target tissue injury in graft-versus-host disease2018

    • 著者名/発表者名
      Takanori Teshima
    • 学会等名
      Hematology/Oncology Seminar, Icahn School of Medicine at Mount Sinai
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi