近年、免疫不全宿主の増加にともない真菌感染症が増加している。わが国で頻度が高いのは、アスペルギルス、カンジダ、そしてクリプトコックス症とされている。真菌感染症は一度発症すると難治化し予後不良となることが多いため有効な治療法とともにワクチンの開発が望まれるが、現在臨床で使用可能なものは皆無である。本研究では、クリプトコックスやアスペルギルスの病原性に重要とされるβ-glucosylceramide(β-GlcCer)を用いた新規ワクチンの開発を目指している。 これまでに我々は、β-GlcCerがクリプトコックス感染マウスに特異的IgM産生を誘導し感染防御効果を示すことを明らかにしたが、感染後もβ-GlcCerの投与を継続する点でワクチンへの応用を考える際の課題であった。本研究では、β-GlcCerの投与スケジュールを再検討すること、さらには適切なアジュバントを用いることでより効率的な抗体産生が誘導されるかについての解析を行った。β-GlcCerを1週間隔で6回投与し、アジュバントとして特異的なnatural killer T(NKT)細胞活性化剤であるα-galactosylceramide(α-GalCer)を併用したところ、血清中のβ-GlcCer特異的IgG産生が検出され、α-GalCer投与によってその産生が増加した。しかしながら、抗体測定系の信頼性を確認するために、別な方法で測定を実施したところ明確な産生を検出することができなかった。今後は、抗体測定系の確立とともに、マイクロ粒子にβ-GlcCerを結合することで特異的なB細胞受容体を架橋するなどより効率的なワクチン抗原の投与法について、さらにはより適切なアジュバントの選別に関しても検討を進める予定にしている。
|