研究課題
心不全は高齢者において最大の医療費を費やしている疾患であるにも関わらず、5年生存率50%と生命予後の悪い疾患である。心不全の基本的病態は心臓からの拍出が低下するポンプ失調であり、それを担う細胞は心筋細胞である。これまで心不全の新しい治療標的を検討する上で、心筋細胞に着目した研究がほとんどであったが、我々は我々は心臓を構成する細胞の内、細胞数比で約1%しか存在しない心臓マクロファージが心筋細胞の収縮力の維持に必須であることを見出した。しかし心臓マクロファージの心臓の基本的恒常性維持に必要であることまでは分かったが、心臓マクロファージがもとになって心不全が発症するかどうかなどは、いまだまったく不明である。今回我々は心不全が老化に伴って増加してくる老化関連疾患であるという観点から、心臓マクロファージが老化した際に心臓への影響がどのように変化するのかという検討を行うこととした。まず、マウスモデルを用いて、心臓マクロファージは老化した個体ではどのように変化が生じるのかを明らかにするために、遺伝子発現変化、エピジェネティック変化などに着目し、検討を行い、老化に伴う変化の実態を把握する。また、その老化に伴う変化はどのような因子によって生じる変化かどうか、同定した老化関連因子への介入によって、心臓機能にどのような影響が出るのかを明らかにする。心不全の発症を心臓の老化ととらえ、さらにその心臓の老化は心臓の免疫系細胞の老化によってドライブされるという新しい概念を提供するとともに、新しい治療標的を同定、治療への可能性を検討することを目的とする。本研究では、心臓・脳・骨髄が連携し、心不全または加齢が新たな心不全を惹起する新しいシステムを同定した。さらに、このメカニズムは、心臓だけでなく、複数の臓器の疾患発症に関係していることを見出した。
すべて 2019
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Science
巻: 364 ページ: eaav3136
10.1126/science.aav3136