研究課題
人工知能解析用コンピュータ導入により,効率的に人工知能の性能を評価できるようになった.2光子顕微鏡および共焦点顕微鏡による消化管(動物および検体)の撮影が進み,29年度において予備実験を完了した.30年度は3D解析精度を向上させるため,透明化試薬LUCIDの組成を変更して24時間以内に標本の蛍光標識と透明化を完了できるようになった.さらに臓器深部観察のための核標識試薬を数種類選抜し,医生検標本のルーチン撮影においても深部観察が可能になった.この結果,2光子顕微鏡では1000μmを超える深部まで切片を作成せずに観察が可能になり,共焦点顕微鏡においても600μmまで観察が可能になった.癌の3次元的診断は,撮影枚数が数千枚に達するため,人工知能による病理診断支援が不可欠である.そこで2次元畳み込みニューラルネットワークとLSTM(long short term memory)を撮影断面各層において実施し,それを統合して教師あり学習モデルを構築した.その結果,sensitivity0.94という高い精度での腫瘍検出が可能になった.このことは従来の診断では標本の数断面で病理診断せざるを得ないため病変見落としはリスクが潜在していたが,本研究により標本全体を精査することが可能になった.畳み込みニューラルネットワークのもう一つの応用として,低倍率対物レンズ(x10)撮影データの拡大に成功した.この結果,ワーキングディスタンスの短い高倍率レンズの欠点をあるていど補うことが可能になった.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Pathology International
巻: 68 ページ: 102-108