研究課題
これまで申請者らは肝細胞癌のゲノム変異プロファイルを次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析し、肝発癌リスク因子とともに病因・予後との関連を解明してきた(Hepatology 2010, 2013, 2014, J Gastroenterol 2016)。本研究では、ヒトiPS細胞由来肝細胞系譜に最新ゲノム情報に基づく遺伝子改変を順次加えることで人工的肝発癌モデルを開発し、肝発癌機序の詳細を解明することを目的としている。これまで、ヒトiPS細胞から肝細胞系譜への分化誘導法を改良し、肝幹細胞マーカーでFACS分離を繰り返すことで、未分化細胞の混入のないヒトiPS細胞由来肝幹・前駆細胞の純化・培養法を確立した。また発生過程を模倣する分化誘導法を開発し、ヒトiPS細胞から中胚葉系細胞、さらには肝星細胞様細胞への分化誘導法を開発し、得られた細胞は脂肪滴を含有するなど肝星細胞としての形質を有していた。このヒトiPS細胞由来星細胞様細胞と肝細胞系譜細胞との共培養系を構築し、肝細胞系譜細胞のさらなる成熟化と、それには星細胞におけるラミニン等の遺伝子発現プロファイルの変化が関与することが示唆された。これと並行して、次世代シークエンサーを用いて肝腫瘍のゲノム変異およびウイルスゲノムの宿主ゲノムへのintegrationを網羅的に解析し、発癌過程に重要なゲノム異常とHBV-宿主キメラDNAを探索した。この情報をもとに、ヒトiPS細胞にHBV遺伝子挿入を加えるためのベクターの構築を進め、人工発癌モデル作成に必要な遺伝子候補における遺伝子改変を推進している。
2: おおむね順調に進展している
人工発癌モデル作成に関わる解析可能なヒトiPS細胞由来肝細胞系譜を樹立する必要があったため、これまでの分化・培養法の改良を行い、間葉系細胞への分化誘導法を確立した。これらの共培養系を構築することにより、より生体に近い培養モデルにおける解析が可能となった。また、臨床検体における遺伝子情報を基盤として、ヒトiPS細胞における改変遺伝子および導入遺伝子を進めた。
肝癌組織における網羅的ゲノム解析の結果、HBV‐ヒトキメラ遺伝子情報が明らかとなってきたため、ヒト-ウイルス遺伝子のbreak pointにHBV遺伝子を挿入した遺伝子改変iPS細胞を樹立することで、HBV integration発癌モデルを構築し、腫瘍性に関わる表現型および幹細胞機能に与える影響を解析し、非HBV起因性肝癌と本質的に病態を異にするHBV肝癌に特異的な発癌メカニズムの詳細を明らかとする予定である。
理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
Journal of Hepatology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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