研究課題
これまで臨床検体を用いて発癌に関与するゲノム異常を解析するともに、in vitro解析に必要なヒトiPS細胞の分化誘導・培養法を開発してきた。C型肝癌ではHCV排除の有無による遺伝子変異の頻度の差は認めず、ウイルス遺伝子挿入も認めなかった。一方、B型肝癌ではHBV integrationがHBs抗原陽性の93%(78か所)に検出され、ヒト側ではTERTが最も多く、次いでMLL4、MYO7Aであった。核酸アナログ薬によるHBV制御下の発癌ではTERT promoter変異頻度は低かったが、HBV integration頻度に差はなかった (0% versus 40%, p=0.02)。HBV既感染例の遺伝子プロファイルはHBV持続感染例とは異なっていたが、HBV integrationは9.3% 16か所に検出された。HBV制御下における発癌にはHBx遺伝子の宿主キメラ遺伝子の関与が大きいと考えられたため、ヒトiPS細胞においてHBx遺伝子をTERT領域、およびMLL4遺伝子にノックインし、臨床検体で認められた宿主-ウイルスキメラ遺伝子を再現した。この人工遺伝子改変iPS細胞シリーズを用いて癌化に関わる形質を解析するために、ヒトiPS細胞から肝臓系譜細胞、および間葉系細胞への分化誘導法を開発した。とくに、間葉系細胞への分化誘導法を独自に開発し、得られた細胞は脂肪滴を含有し、TGF-β刺激によりαSMAを発現するなど肝星細胞としての形質を有していた。このヒトiPS細胞由来星細胞様細胞と肝細胞系譜細胞との共培養をしたところ、星細胞における細胞外マトリックスの発現プロファイルの変化が生じ、肝細胞の成熟化が得られた。これらの開発により病態形成に関わる細胞連関解析が可能となり、人工遺伝子改変ヒトiPS細胞の癌化に関わる形質解析、細胞連関解析のモデル開発の基盤を構築することができた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (4件)
J Gastroenterol
巻: - ページ: -
10.1007/s00535-020-01672-0
Hepatology Research
10.1111/hepr.13480
Hepatology Communications
巻: 4 ページ: 235~254
10.1002/hep4.1459
Cancers
巻: 11 ページ: 1517~1517
10.3390/cancers11101517
巻: 49 ページ: 1466~1474
10.1111/hepr.13403
Scientific Reports
巻: 9 ページ: -
10.1038/s41598-019-42114-z