研究課題
我々はヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)ベクターを基盤とした、ウイルス粒子表面蛋白改変型VLP(Virus like particle)ワクチン開発プラットフォーム技術の確立を目指している。H29年度はモデルワクチンとしてエボラ出血熱の原因ウイルスであるザイール株のエボラウイルスの表面糖蛋白GPを搭載した非増殖型組換えhPIV2ワクチンの作製とその効力の解析を行った。具体的には、GP遺伝子全長を用い、F88A、F535A二重変異を導入することによってGP蛋白を介した組換えウイルスの細胞内進入を阻止し、遺伝子組換えウイルスワクチンの非増殖性を担保した。1サイクルのみの感染、侵入はF遺伝子欠損型のhPIV2ベクターが有するHN蛋白、F蛋白(トランスに供給)により可能となる。実際、hPIV2 F蛋白を恒常的に産生する細胞株以外の細胞株では、組換えウイルスの非増殖性が確認された。次に、マウス実験においてGP蛋白に対する最大の抗体価を得るための組換えワクチンの投与条件を決定する目的で、種々の条件下で免疫したマウスの血清を用いてGP蛋白に対するELISAによる評価を行い、最適投与条件を決定した。その条件下で本実験を行った。VSV(Vesicular Stomatitis Virus)/エボラGP pseudotypeウイルスを用いたin vitro感染阻止実験により、ワクチン投与マウスの血清中にpseudotypeエボラウイルス感染を明確に阻止する中和抗体活性があることが確認された(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 高田礼人 教授との共同研究)。
2: おおむね順調に進展している
パラインフルエンザ2型ウイルスベクターを用いた遺伝子組換えワクチン創成プラットフォーム技術によるワクチン第一号としてエボラウイルスワクチンを作製し、中和抗体誘導活性と非増殖性が確認されたから、開発は順調といえる。
免疫電顕にてhPIV2ベクター表面上にエボラウイルスGP蛋白が搭載されていることを確認し、また、液性免疫のみならず、細胞性免疫の誘導活性に関しても解析する。プラットフォーム技術を用いて他の抗原を搭載した組換えワクチンも作製していくが、本命は世界的に要望が高い、プレフュージョン型のF蛋白を標的としたRSウイルスワクチンである。
http://www.medic.mie-u.ac.jp/microbiol/
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