研究課題
我々はヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)ベクターを基盤とした、ウイルス粒子表面蛋白改変型組換えワクチン開発プラットフォーム技術の確立を目指している。H29年度はモデルワクチンとしてエボラ出血熱の原因ウイルスであるザイール株のエボラウイルスの表面糖蛋白GPを搭載した非増殖型組換えhPIV2ワクチンの作製とその非増殖性・有効性の確認解析、マウスへの投与条件の最適化、その条件下での中和抗体誘導能の解析(VSV/エボラGP pseudotypeウイルスを用いたin vitro感染阻止実験)を行った。H30年度は前年度に引き続き、ワクチン投与マウスの血清中にpseudotypeエボラウイルス感染を明確に阻止する中和抗体活性があることを確証した(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 高田礼人 教授との共同研究)。ADE(抗体増強活性)効果も確認した。CTL活性の確認は標的ペプチドが定まらず、成功していないが、エボラウイルスの感染阻止には中和抗体が有効であることがすでに報告されている(Marzi A et al., Proc Natl Acad Sci USA 110: 1893-1898, 2013)ことから、問題ないと考えている。また、組換えウイルス自体の特性解析として抗エボラウイルスGP抗体を用いた免疫電顕解析にてベクター表面に大量のGP蛋白が搭載されていることを確認した(三重大学大学院医学系研究科 溝口明教授との共同研究)。本ワクチンは世界で唯一の完全非増殖型のキメラウイルスワクチンであり、我が国(対岸の火事ではないことを認識する必要がある)のみならず、世界の保健医療におけるエボラウイルス対策の有力候補ワクチンとして大いに期待・貢献できると考えている。
2: おおむね順調に進展している
パラインフルエンザ2型ウイルスベクターを用いた遺伝子組換えワクチン創成プラットフォーム技術によるワクチン第一号としてエボラウイルスワクチンを作製 し、中和抗体誘導活性と非増殖性が確認され、さらに、免疫電顕にてhPIV2ベクター粒子の表面にキメラウイルスとして実際にエボラウイルスGP蛋白が搭載されていることが確認されたことから、開発は順調といえる。
現実問題として、エボラウイルスワクチンの有効性の評価はわが国では難しく、エボラウイルスワクチンは将来に備えて一旦保存しておき、プラットフォーム技術を用いた他の抗原を搭載した組換えワクチンの作製を推進していくことの方が現実に即した開発ストラテジーであると考える。本命は世界的に開発要望が高い、プレフュージョン型のF蛋白を標的としたRS(Respiratory Syncytial)ウイルスワクチン開発である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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