研究課題
我々はヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)を基盤とした、ウイルス粒子表面蛋白改変型組換えワクチン開発のためのプラットフォーム技術を確立した。具体的には応用第一号として中和抗体を誘導できることを証明したエボラウイルスワクチンを作製した。BC-PIV/EBOV-GPと名付けられた当該ワクチンはアフリカでのエボラ出血熱の終息に大いに貢献したとされるrVSV/ZEBOV(Ebola Zaire vaccine live)に匹敵する効果が期待でき、なおかつrVSV/ZEBOVは増殖型であるために50%で見られた副作用がBC-PIVでは回避できるはずで(BC-PIV/EBOV-GPは同じ生ワクチンのカテゴリーであるが、完全非増殖型なので、理論的に安全性が担保される)、実用性が高いと考える。さらに、抗原をウイルスエンベロープ膜の内外に自在に搭載させる技術も確立し、当該抗原の局在を免疫電顕で確認した。また、melanomaに対するがん抗原エピトープとしてgp100とWT1のエピトープをウイルス膜の外側と内側に各々同時に搭載させたがんワクチンを作製し、マウスに移植したmelanoma細胞の増殖を抑制することも確認した。実際、縮小した腫瘍組織の周囲には大量のCD8陽性細胞が集積していた。これらの結果は2019年9月9日号のScientific Reportsに掲載された。今回我々が確立した安全な遺伝子組換え生ワクチン迅速作製用のプラットフォーム技術は今後、人類を脅かすであろう新興感染症に対する画期的な防御手段として大いに役立つと考えられる。それが現実となったCOVID-19パンデミックに際しては、BC-PIVを用いた遺伝子組換え実験を文部科学大臣に申請し、承認が得られてからワクチンの作製を開始し、一ヵ月以内でSARS-CoV-2に対するワクチンを完成させ、蛋白発現も確認できた。
http://www.medic.mie-u.ac.jp/microbiol/
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