研究課題
腎臓は老化により機能が低下する臓器であるが、本研究では腎臓の老化のメカニズムを、蛋白分解機構のひとつであるユビキチン・プロテアソームに着目して研究している。蛋白分解機構は細胞の老化とともに機能低下することが分かっており、異常蛋白や酸化物が分解されずに細胞内に蓄積すると細胞毒性が生じ、これらがさらに細胞の老化につながると考えられる。本研究では細胞内の主要なタンパク分解系の一つであるプロテアソームの機能を、糸球体を構成する細胞の一つであるポドサイトにおいて欠損させたマウスを作成し、ポドサイトにおけるユビキチン・プロテアソームの役割を検討した。このマウスは早期より蛋白尿を認めて、腎不全で若年齢において死亡した。このことからポドサイトにおけるユビキチン・プロテアソームの重要性が示された。このマウスのポドサイトでは酸化ストレスやアポトーシスがみられ、ポドサイト障害の一因になっていると考えられる。またもう一つの主要なタンパク分解機構であるオートファジーの活性低下が見られた。両者のクロストークは臓器によっても異なる報告がなされており、ポドサイトにおいて両者がどのように関連しているのかを調べることは、ポドサイトにおける蛋白分解を包括的に把握するうえで重要である。本研究では、このマウスを加齢に伴う蛋白分解機能の低下による腎老化のモデルとして、老化による腎機能低下のメカニズムをより詳細に解明することを目的としている。
2: おおむね順調に進展している
ポドサイトの老化をどのような因子で評価するかという段階において、当初予定していた因子の発現がうまく確認できなかったため、条件の検討や他の因子を検討する必要性が生じていたが、現在、ポドサイトのユビキチン・プロテアソーム系の機能を低下させると酸化ストレスが生じることが培養細胞でも判明しており、現在順調に解析を行なっている。また研究実施者の研究機関移動に伴って、実験動物や細胞を移動する必要性が生じたが、新たな研究機関ではすでに実験の継続可能な状態となっている。
プロテアソーム機能が低下することでポドサイトに蓄積した蛋白を分析することで、腎不全や老化と関連する因子を選別し、ポドサイトのプロテアソームの機能低下から腎不全にいたるメカニズムをより詳細に解析したい考えている。またプロテアソームとオートファジーの関連については、プロテアソーム機能の低下をオートファジーが代償する機構の存在が他の生物種や臓器において報告されているが、詳細なメカニズムは不明である。今後はヒトの腎疾患や高齢者の腎臓のポドサイトにおいて、プロテアソームやオートファジーといった蛋白分解機構がどのような活性状態にあるかを評価し、また両者の関連を明らかにしていきたい。さらにこれらの蛋白分解機構を活性化させたり、細胞ストレスを軽減するような化合物を投与することで、ポドサイト障害を軽減させ、慢性腎臓病の進行を遅らせるような治療薬の開発を目指したい。
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