腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の塊が多数あり、ここで血液濾過を行っている。血管の一番外側をポドサイトと呼ばれる細胞が覆っており、血清蛋白の最終濾過障壁としての役割を担っている。そのためポドサイトが障害を受けると、血清蛋白が尿に漏出して蛋白尿が生じる。ポドサイト障害が持続してやがてポドサイトが糸球体から脱落すると、糸球体も硬化して血液濾過ができなくなり慢性腎臓病(CKD)が進行する。加齢によりポドサイト数が減少してCKDが進行することがわかっているが、そのメカニズムは解明されていない。 細胞内において不要な蛋白を分解するシステムにはAutophagy系とユビキチンープロテアソーム(UPS)系の二つが知られており、様々な細胞で加齢によりその機能が低下することがわかっている。申請者は、ポドサイトの細胞内蛋白分解系の機能低下とCKDが関係あると考え、それぞれがポドサイト特異的に機能低下するマウスを作成した。 Autophagy機能不全マウスが加齢によりほとんど変化を示さないのに対し、 UPS機能不全マウスは早期にポドサイト障害を起こして蛋白尿が出現し、腎不全により死亡した。このマウスではポドサイトの老化が促進、またアポトーシスによりポドサイトが減少して硬化した糸球体が増加し、CKDが進行したと分かった。この結果からポドサイトの機能維持にUPSがより重要であると考えられた。 ポドサイト障害の原因を解析したところ、ポドサイトにおいて酸化ストレスの増加やオートファジー活性の抑制がみられた。そこで細胞実験において抗酸化剤やオートファジーの活性化を試みたところ、ポドサイトのアポトーシスが抑制されることが分かった。このことは抗酸化剤やオートファジーの活性化が、UPSの機能低下によるポドサイトの老化進行を抑制しCKDの進行を遅らせる可能性があると考えられる。
|