本研究では、造血組織として認識されている骨髄を内分泌臓器と捉え、そこから分泌された液性因子が遠隔臓器や全身に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。具体的には、腎でのリンの再吸収を抑制し、その血中濃度を下げる働きを持つ FGF23 の血球からの産生と全身への寄与についてマウスモデルを用いて詳細な解析を進めている。 平成30年度には、平成29年度に捉えた骨髄交換神経シグナルに呼応した骨髄細胞での FGF23 mRNA 上昇について、これが赤芽球由来である事を prospective cell sorting を用いて確定することができた。現在は、交感神経シグナルを受けた赤芽球からの FGF23 蛋白産生、放出様式について検討中である。また、骨髄細胞外液中で上昇した FGF23 蛋白が骨髄局所でどのような働きをしているのかを、造血幹前駆細胞の移動メカニズムとの関係から検討中である。FGF23ノックアウトマウスでの G-CSF による動員効率は非常に低く、これは骨髄移植によって造血細胞のみ FGF23ノックアウトとしたキメラマウスでも同様であったためであり、これまでわかっている動員機構のどの部分を阻害しているのかを一つずつ検討している最中である。また、野性型マウスの骨髄を FGF23ノックアウトマウスをレシピエントとして移植し、再開された造血システムのみからの FGF23 産生で FGF23ノックアウトマウスの早期老化形質を改善させられるかどうかについての実験は、移植後のマウスが非常に弱く安定的に移植後のマウスを長期に維持するのが難しいことが明らかとなって来た。食餌や強制的水分補給なども含めた工夫で移植後早期の生存率は上昇したものの、移植後4-5週で比較的元気であっても突然死する個体が多く、現在、移植時期の前倒しなどの検討を行っているところである。
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