研究課題/領域番号 |
17K19662
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木戸 博 徳島大学, 先端酵素学研究所(デザイン), 特任教授 (50144978)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | アレルギー / クラススイッチ / 抗原親和性 / 湿疹 / IgE / IgG1 / IgM / 経口免疫寛容 |
研究実績の概要 |
アレルギーは国民病とされ、予防と治療が急務である。医療現場では、従来推奨されたアレルゲンを避ける予防・治療法とは逆に、早期からアレルゲンを摂取させる「アレルギー医療革命」が始まっている。しかし、これを支える診断バイオマーカーや、経過観察モニターがない。我々はこの問題を、アレルギー発症関連抗体を高感度検出するマイクロアレイ(DCPチップ)を開発し、抗原親和性と、イムノグロブリンクラススイッチの測定を実施している。プロジェクトでは、DCPチップを用いて予防・治療の診断バイオマーカー、経過観察モニター法の創出、経口免疫寛容児と食物アレルギー発症児の違いを解析している。平成29年度は、出生直後から生後6ヶ月間の授乳期の抗原特異的IgG1, IgG2, IgA, IgG3, IgEの出現パターン解析から、クラススイッチをフォローすると共に、食物アレルギー発症に関与するhigh affinity IgEと、経口免疫寛容成立に関与すると推定しているlow affinity IgEの産生機序の解析を実施した。生後6ヶ月でhigh affinity IgEを示した乳児のIgG1と、low affinity IgEを示した乳児のIgG1は、共にhigh affinityの性状を示し、抗原親和性からするとIgG1→high affinity IgEクラススイッチが推定された。low affinity IgEの由来については、IgG1に由来する可能性が否定されたことから、low affinity の性状が報告されているIgMの可能性が推定された。次年度にこれを検証する。ヒト検体では解析に制限があるため、食物アレルギーモデル動物を作成しているが、平成29年度に経皮感作モデルの食物アレルギーと、経口免疫寛容モデルの作成に成功しており、ヒト以外にモデルマウスの検体も使用して目標を達成する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、出生直後から生後6ヶ月間の授乳期の抗原特異的IgG1, IgG2, IgA, IgG3, IgEの出現パターン解析から、クラススイッチをフォローすると共に、食物アレルギー発症に関与するhigh affinity IgEと、経口免疫寛容成立に関与すると推定しているlow affinity IgEの産生機序の解析を実施した。生後6ヶ月でhigh affinity IgEを示した乳児のIgG1と、low affinity IgEを示した乳児のIgG1は、共にhigh affinityの性状を示し、抗原親和性からするとIgG1→high affinity IgEクラススイッチが推定された。low affinity IgEの由来については、IgG1に由来する可能性が否定されたことから、low affinity の性状が報告されているIgMの可能性が推定された。次年度にこれを検証する予定で、本プロジェクトの根源的課題に着実に迫っている。この一連の研究の中で、抗体の抗原親和性を、competitibe binding inhibitionから、IC50値で示す方法を確立しており、今後に繋がる成果である。さらにヒト検体では解析に制限があるため、食物アレルギーモデル動物を作成しているが、平成29年度に経皮感作モデルの食物アレルギーと、経口免疫寛容モデルの作成に成功していることも評価に値する。
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今後の研究の推進方策 |
これまで抗原特異的IgMの定量は困難とされていたが、本プロジェクトではDCPマイクロアレイを用いて、抗原特異的IgMの検出と抗原親和性の測定を実施する。DCPマイクロアレイを用いた高感度測定システムを確立することで、IgM→low affinity IgEクラススイッチの可能性を示すことができると推定している。さらに、経口免疫寛容の成立に、どのような機序で、IgM→low affinity IgEクラススイッチが発動するかを解析することは、食物アレルギーの予防と治療の本質に迫る研究として、期待している。これらの研究を分子論的に証明するためには、経皮感作による食物アレルギーモデルマウスと、経口免疫寛容モデルマウスの作成が不可欠であるが、平成29年度の研究でこれらのモデルマウスの作成に成功しており、準備は完了している。
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