NAFLDにおける便中のアミノ酸減少は詳細な機序は不明であるが、アミノ酸産生腸内細菌の減少またはアミノ酸消費腸内細菌の増加などにより、体内のアミノ酸プールの減少の結果であると推測される。軽度のアミノ酸減少は便中のアミノ酸が低下しても血液中や主要臓器へのアミノ酸供給は低下しないと考えられるが、肝臓への供給は低下する可能性がある。このような軽度のアミノ酸欠乏状態では、肝臓へ供給されるアミノ酸の減少が起きれば過栄養によって多量に肝臓に流入するエネルギーを処理して、肝臓外へ分泌輸送するタンパク質合成が必要な機能が相対的に低下して結果的に脂肪蓄積の増悪に繋がると考えられる。つまり過栄養状態では軽度のアミノ酸低下でも相対的には飢餓時と同じ代謝異常(エネルギー・アミノ酸比の亢進)を呈し脂肪肝の増悪が起きるのではないかと考えられる(作業仮説)。この仮説の証明のために、これまで患者血液の全アミノ酸分画と便中全アミノ酸分画の比較をして潜在的アミノ酸欠乏状況の証明を行った。また患者の糞便メタボローム解析を行い詳細な解析を行った。本年度は患者データー、特に病理所見とアミノ酸解析の結果の相関解析を行った。驚いたことにNASHの繊維化進展と特殊のアミノ酸が相関する端緒をつかむことができた。今回膨大なデーターの解析になり診断や治療への応用はネットウェアーワーク解析などのコンピューター処理による解析が必要であると考えられた。したがって今後得られた結果を用いて早期診断、予後の解析にAIを用いた新規診断方法の検討を行いたい。
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