研究実績の概要 |
レプチンはホルモンの一種であり、食事摂取後に脳内、筋肉、褐色脂肪細胞に働き、インスリン感受性、及び血糖の上昇抑制に役割を果たしていることが知られている。近年レプチンの受容体がT細胞上にもあることが発見され、様々な腸炎モデルにてレプチン欠損では腸炎が誘導されにくいことが示されている。さらにそのメカニズムとしてTh1、Th17の抑制、Tregの増加という報告がなされている(B Siegmund, et al. Gastroenterology 2002, Gut 2004, B Reis, et al. JI 2015)。しかし、すべて大腸の粘膜固有層内での反応しか見ておらず、食事摂取後に糖が吸収される小腸においては解析がされていないのが現状である。レプチンシグナルの下流シグナルはSTAT3経路、mTOR/Akt経路があり、前者はTh17細胞誘導に必須であることが示されている。一方で後者についてはT細胞における役割は不明な点が多く、特に腸管上皮では解析されていない。腸管上皮内抑制性の細胞集団であるCD4CD8aa細胞は近年着目されている細胞集団であり、腸内細菌依存的に誘導されるとされている(Sujino T, et al Science 2016)。レプチンのレセプターKOマウスであるdbdbマウスにおいては野生型マウスと比較しCD4CD8aa細胞がより多く誘導される。一方でCD4特異的にSTAT3を上昇させるSOCSfl/fl:CD4creマウスではCD4CD8aaは有意に減少しないことがプレリミの実験で判明している。そこでレプチンシグナル下流におけるmTORに着目して腸管上皮内CD4CD8aa細胞の分化誘導との関連性を検討する。 mTORシグナルは細胞内代謝とくに解糖系に必要な分子であり、mTORが活性化することでTh17細胞に分化することが知られている。近年細胞の分化増殖に代謝機構が重要視されており、細胞内の代謝調節という切り口から腸管上皮内の細胞の分化誘導機能を解明することで炎症性腸疾患の病態解明、治療方法の確立を目指す。
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