研究課題/領域番号 |
17K19670
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
安井 裕之 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (20278443)
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研究分担者 |
木村 寛之 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (50437240)
有光 健治 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (50707693)
戸崎 充男 京都大学, 環境安全保健機構, 准教授 (70207570)
河嶋 秀和 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (70359438)
中田 晋 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | がんTheranostics / フレキシブルTheranosticsプローブ / トランスポゾンシステムを用いたマウスモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、分子イメージング技術を用いてがんの早期発見、性状の特異的・効率的な把握から速やかに有効な治療法へと結びつけるワークフローの構築である。そのため、がんの診断と治療を一体と捉えた“がんTheranostics”を可能にする化合物創製とその高度化利用を目指す。特に、依然として予後が不良である肺がんや脳腫瘍を対象疾患として、臨床に応用可能な画像診断法・治療法に有用な新規化合物を創製することにより、画像診断と治療を融合させた新しいがん治療の個別化、効率化を提案する。 上皮成長因子受容体(EGFR)、繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、チロシンキナーゼ型受容体の一つであるEphA2を標的としたプローブ候補化合物として、低分子化合物の非標識体を5種類設計・合成し、うち4化合物がアッセイの結果から標的分子との親和性を有していることが分かった。さらに、そのうちの3化合物はI-125,F-18で標識することができた。得られた3種の標識化合物を用いて健常マウスでの基礎体内動態を実施したところ、良好な血液クリアランスと非特異的臓器からの速やかなクリアランスを示したことから、イメージング及び治療に適した候補化合物であると考えている。次年度は、より詳細な解析を目的としたモデル動物の作製を進める。一方で、治療を目的とした化合物については、腫瘍細胞に対する増殖抑制効果や細胞死誘導効果をインビトロで詳細に解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR、FGFR、EphA2を標的としたプローブとして、3種の候補化合物を見出すことに成功した。特に開発が進んでいるのが、EGFRを標的とした化合物Aである。F-18で標識された化合物Aを用いてPET/CT撮像を実施したところ、肝臓への集積は、投与30分後が最も高く徐々に集積量の低下が見られた。肺への集積は投与30分後にわずかに集積が見られたが、投与60分後には集積は見られなかった。また、脳頭蓋骨、骨、膀胱への集積は、継時的に増加していた。得られた画像から各撮像タイムポイントでの腫瘍/筋肉比、腫瘍/肺比を算出したところ、腫瘍/筋肉比は、30分後が15.9と最も高い結果となった。120分後まで、一旦2.54まで減少したが、180分後には7.46まで再び増加していた。腫瘍/肺比は、120分後が7.58と最も高値を示した。これらの結果から、化合物Aは投与30分後肝代謝を受け、継時的に脳頭蓋骨、骨へ集積する傾向があると考えられる。本研究は肺がんをターゲットとしている為、バックグラウンドである肺への集積が少ないことが望ましい。その点においては、投与120分後の撮像が最も腫瘍が明瞭に検出できると考える。これらの結果を踏まえ、現在化合物Aの特許出願を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
EGFRvIII、Fzd3に関しては、既に蓄積しているトランスポゾンシステムを用いたマウスモデル脳腫瘍組織を適用し、発現解析を中心とした病理学的な検討を進めると共に、蛍光もしくはRI標識した抗体由来のプローブを合成し、培養脳腫瘍幹細胞画分を用いたインビトロ実験によりその標的分子への結合性を評価する。さらに、本システムを他の標的にも適用することで、自然発症型のモデルの構築を検討する。EGFR、FGFR、EphA2に関しては、イメージングプローブの最適化と、治療実験を実施する。特に脳腫瘍に関しては、標的分子とプローブの集積度合いの評価に加え、EGFRvIIIもしくはFzd3の機能を阻害した際の抗腫瘍活性を定量的に評価する。また、近年、脳腫瘍幹細胞の浸潤能制御に関わり治療標的として着目されているEphA2に関しても抗腫瘍効果の確立を目指す。また、抗体プローブに対する抗体依存的な細胞介在性細胞障害作用の活性評価や、RI内用療法用プローブの光線力学治療等とのコンビネーションによる効果増強作用の証明を目指す。肺がんに関しては、低分子化合物を母体としたプローブのイメージングと治療効果の有用性を脳腫瘍と同様に評価する。フレキシブルTheranosticsプローブの創製に成功すれば、画像診断と治療を融合させた、がん治療の個別化、効率化を目指した新しいワークフローの構築が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は728円であるため、翌年度分として請求した助成金と合わせた総額に大きな影響が出る程の金額ではないため、消耗品費用の一部として迅速に使用できると考えている。
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