研究代表者は、腸上皮オルガノイド細胞移植研究を展開する過程において、培養小腸オルガノイドを大腸に異所移植しても小腸固有の形質や分子発現を維持する現象を見出した。本研究は、この知見から得た着想、すなわち『細胞移植により大腸の一部に小腸機能を賦与する技術』を確立し、動物モデルを用いて検証するものであった。具体的には、小腸上皮オルガノイド移植により、部分的に小腸化した大腸を人工的に作成する新しい実験手法を利用して、さまざまな大腸疾患の病態解析研究を進め、また小腸疾患に対する再生医療技術を開発することを柱とした研究展開を目的とした。 平成30年度には、1)近位・中位・遠位の異なる大腸領域にオルガノイドを移植する手術技術の条件を新規に設定した。すなわち、任意の大腸部位の内腔側にならぶ上皮細胞層を化学処理によって組織から解離させるための方法を、マウスモデルを用いて考案することができた。これにより、致死的ではない大腸上皮解離が得られ、その後も生存するマウス術後管理手法を確立した。さらに2) 新規大腸上皮解離マウスモデルへの細胞移植実験では、蛍光標識した培養腸上皮オルガノイド細胞を1) で作成する新規大腸上皮解離モデルをレシピエントとし移植することに成功した。しかも、大腸へ移植する細胞を、小腸の異なる部分(近位・中位・遠位)に由来する細胞として調整した場合、生着組織でいかなる違いが見られるかについて、形態および分子発現の上でも詳細に検討することができた。
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