研究課題
本邦での炎症性腸疾患罹患者数が増加するなか、炎症性腸疾患の重篤な合併症の1つである炎症性腸疾患合併大腸癌(炎症性大腸癌)の予防法の開発・治療法の改善が望まれている。炎症性大腸癌は早期診断の困難な例が多く、その化学療法は非炎症性大腸癌に準じて施行されることも多いが、治療抵抗例が散見される。本研究では、炎症性大腸腫瘍と非炎症性大腸腫瘍の差異を翻訳後修飾の視点から明らかとし、炎症性大腸腫瘍の病態を明らかにすることで、その予防・治療に資することを目的とする。生体内の解析を行うため、まずマウスに発癌誘導物資であるアゾキシメタン(AOM)を投与したのちデキストラン硫酸による腸炎を誘導し、炎症性大腸腫瘍を作成した。大腸腫瘍及び辺縁非腫瘍部大腸上皮を採取し、ユビキチン化タンパクを分離・精製し、質量分析計でユビキチン化タンパクの網羅的同定を行い、腫瘍化に伴い発現が変化するユビキチン化タンパクを多数同定し得た。続いて、炎症性大腸腫瘍と、AOMを1週間毎に8回投与することで誘導された非炎症性大腸腫瘍からそれぞれ検体を採取し、質量分析計を用いてユビキチン化タンパクの解析を行った。培養細胞での解析行うために、まずマウス正常大腸組織及び炎症性腫瘍組織から細胞を単離し、それぞれの長期培養系を確立した。大腸上皮培養細胞に比べて炎症性腫瘍培養細胞でもユビキチン化修飾発現の変化を認めた。現在、個別のタンパクに注目し、腫瘍組織におけるユビキチン化の生化学的・機能的解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
炎症性大腸腫瘍と非炎症性大腸腫瘍のモデルマウスを作成し、腫瘍組織の網羅的ユビキチン化タンパクの解析系を確立し、興味深いユビキチン関連タンパクを複数抽出することが出来たため。また、大腸腫瘍細胞の長期培養系を確立し、培養細胞におけるユビキチン関連タンパクの生化学的・機能的解析を可能としたため。
初年度の実験結果より候補となったユビキチン関連タンパクについて、腫瘍組織及び培養細胞を用いて生化学的・機能的な役割を明らかにするとともに、他のマウスモデルの大腸腫瘍と比較しつつ多面的に解析を行う。
計画当初に比べ試薬購入が廉価で可能であった。次年度は解析規模を拡大するため試薬増量及び施設追加使用を行う予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 496 ページ: 367~373
10.1016/j.bbrc.2018.01.053