研究課題
炎症性腸疾患合併大腸癌(炎症性大腸癌)は、炎症性腸疾患(IBD)の長期罹患に伴って高率に合併することが知られており、本邦でのIBD患者数の増加に伴い、その予防法及び治療法の開発が求められている。炎症性大腸癌の発生機序は、通常の大腸癌(孤発性大腸癌)とは大きく異なると考えられているものの、その詳細は明らかではない。本研究では翻訳後修飾の視点から、IBDにおける大腸上皮の腫瘍化の機序を、孤発性大腸腫瘍との比較も交えて明らかにすることを目的とする。炎症性大腸腫瘍誘導にあたっては、マウスにアゾキシメタンを投与したのち、デキストラン硫酸による腸炎を3回繰り返した。発症した大腸腫瘍を摘出し、EDTA溶液で腫瘍を遊離させマトリゲルに懸濁・播種し、Wnt3a及びRspondin-1非存在下で培養を行った結果、複数の初代培養株を樹立し得た。培養細胞でβ-カテニンの遺伝子変異を検索した結果、32番目のアスパラギン酸や37番目のセリンの変異を認め、疾患マウス作成のため37番目のセリンの変異(S37F)についてCRISPR/Cas9による変異マウスの作成を試みたが、変異体を得ることが出来なかった。また、質量分析を用いたユビキチン化タンパクの網羅的同定において、非腫瘍部大腸上皮に比べて炎症性大腸腫瘍組織で増加が示唆されたユビキチン化タンパクのうちVimentinやNEDD4等について、減少が示唆されたうちSodium/potassium-transporting ATPase subunit alpha-1等について、発現・機能解析を行っている。
3: やや遅れている
炎症性大腸腫瘍及び孤発性大腸腫瘍組織における、網羅的ユビキチン化タンパクの解析を行い、腫瘍化に伴って変化するユビキチン化タンパクを多数同定した。そのうち複数のタンパクについて解析が進行しているが、当初予定していた腫瘍発症に関わる因子を見出せていないため、解析の際の効率的な培養法を検討中である。
大腸腫瘍の網羅的ユビキチン化タンパクの解析から得られた結果より、解析範囲を広げ、腫瘍化に伴って変化するユビキチン化タンパクの発現や生化学的特徴、大腸腫瘍発症のメカニズムを明らかにする。また大腸腫瘍解析を容易とする培養システムの構築を試み、解析を加速させる。
当初予定より消耗品の購入が廉価であったため。次年度は解析規模をさらに拡大するため消耗品費及び施設使用費が増加する見込みである。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 26件、 招待講演 3件)
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