研究実績の概要 |
1)hiPS-CTSを用いたリエントリー型不整脈発生モデル:研究代表者は、ヒトiPS細胞から心臓を構成する細胞(心筋細胞、内皮細胞、壁細胞等)を誘導し、温度感受性培養皿(東京女子医大)を用いた細胞シート作製技術を用いて、それら細胞を含むhiPS-CTSの作製に成功している。この複数種細胞からなるミニ3D構造を持つ心臓組織が、より生体の心臓に近い反応を示しうる可能性を検討する。MEAが底面に配された培養皿での細胞外電位の測定とセルモーション解析システム(Sony Motion Vector)による2次元的細胞動態同時観察を行いながら、QT延長誘導薬剤であるIkrブロッカーE4031を投与し、QT延長作用により誘発される薬剤性不整脈の発生及びリエントリーの発生を観測する。 2)hiPS-CTSを用いた致死性不整脈Torsade de Points(TdP)再現モデル:TdPは、心電図上で多形性の心室頻脈波形を示す。また2次元的細胞動態としては、回旋中心が移動するMeandering(さまよい)現象が認められるはずである。 実際にhiPS-CTSを作製しE4031を投与したところ、TdPの心電図波形に類似した細胞外電位波形とともに回旋中心のさまよい現象が認められた。これらの現象は心筋細胞のみでは認められず、心筋を含む複数種の細胞と3D構造が重要であり、心臓組織のミニ3D構造を再現することにより、致死性不整脈の発生そのものを再現できるようになることを明らかにした。本研究は世界で始めてTdPを再現しうるin vitroモデルを示したものであり、Nature Communication誌に掲載された(Kawatou,Nat Commun,2017)。 2018年度は同不整脈発生モデルを疾患iPS細胞研究等に発展的に応用した。
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