研究課題
心臓は再生能力を有さない臓器であり、心臓障害後に心筋は再生せず線維化して心不全に至る(Ieda et al, Dev Cell 2009)。心疾患による死亡は依然多く、心不全に対する新しい治療法として再生医療が期待されている。心臓再生法として幹細胞から心筋細胞を作製して移植する方法があるが、心筋細胞作製工程が煩雑で長期間かかる、幹細胞混入による腫瘍形成の可能性、移植心筋の生着が困難などの課題が指摘されている。これに対して我々は細胞移植を必要としない次世代の心臓再生法として、心臓内の線維芽細胞をその場で直接心筋に分化転換する心筋リプログラミング法を開発した。我々はこれまでに世界に先駆けて線維芽細胞をiPS細胞を経由せず直接心筋に転換する遺伝子を発見し、さらに生体内心筋リプログラミングにより心筋梗塞マウスの心臓再生に成功している(Ieda et al, Cell 2010)。本研究では化合物ライブラリーを用いて、新規心筋リプログラミング促進化合物を同定し、さらに薬理作用を明らかにする。これにより安全で効率的な心筋リプログラミング法を確立でき、心臓再生医療の実現が大きく前進する。これまでに化合物ライブラリーを用いた心筋リプログラミング促進化合物のスクリーニングを行った。心筋誘導を促進する新規化合物を同定するため、10000種類の化合物ライブラリー用いてCell image analyzerによるハイスループットスクリーニングを行った。これまでの実験によりその中で6化合物により心筋リプログラミングが顕著に改善することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
心筋リプログラミング促進化合物のスクリーニングシステムの構築に成功した。さらにこれまでの実験で6化合物で心筋リプログラミングが顕著に改善することを見出した。また化合物を用いて作製する誘導心筋細胞の分子生物学的および生理機能的解析を行った。
今後は他の化合物による心筋リプログラミング促進の分子機構解明や臨床につながるヒト細胞での検討を行っていく。
理由心筋誘導化合物のスクリーニングで複数の新規心筋誘導化合物の同定に成功した。そのため新規化合物の機能を解析するため、来年度は新規心筋誘導化合物で作製した心筋細胞の機能、分子生物学的解析の検討などを行う。使用計画新規心筋誘導化合物で作製した心筋細胞の解析のために、マイクロアレイやパッチクランプを追加で行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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