研究課題
血液粘稠度は血圧を規定する重要な要素のひとつであり、貧血による赤血球減少は血液粘稠度を著しく低下させる。そこで本研究では、貧血と血圧の関係について検証し、貧血による血液粘稠度低下に対する生体応答機構の解明を目指した。まず、貧血患者において、赤血球濃度と血圧が有意に正の相関関係にあることを見出した。この現象は、マウスおよびラットでも確認された。次に、マウスおよびラットを用いた解析を行い、主要な血圧調節系であるレニン-アジオテンシン系のなかで、貧血時には腎臓におけるレニンのmRNA発現が増加がすることを示した。一方、アンジオテンシノーゲンおよびアンジオテンシンI変換酵素の遺伝子発現は変化しなかった。また、貧血時には、レニンの産生部位として知られている腎臓の傍糸球体細胞に加え、腎臓の尿細管間質でもレニンが産生されることを発見した。さらに、尿細管間質でレニンを産生する細胞は線維芽細胞であることを明らかにし、その一部は貧血時に赤血球造血因子エリスロポエチンを同時に産生していることを見出した。病態時の尿細管間質レニン産生についても調べたところ、尿細管間質でのレニン産生は、マウスに腎障害を施すと増大することがわかった。以上の結果を総合すると、尿細管間質細胞は貧血時の赤血球減少と血圧低下に対して、エリスロポエチンとレニンの双方を分泌することにより、赤血球循環の恒常性を維持するために重要な役割を担う細胞であることが示された。
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Scientific Reports
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