研究課題
1.母体低栄養胎仔における既知・新規HPA軸反応標識系の確立:AgRP-mCitrineマウスとCRH-GCaMP3マウスを交配し、AgRP細胞選択的にmCitrineを、CRH細胞選択的にGCaMP3を発現するマウス(AgRP-mCitrine/CRH-GCaMP3)を作製した。成獣の摂餌制限を行い、弓状核のAgRP細胞(mCitrine)と室傍核のCRH細胞(GCaMP3)でc-fosの発現が上昇していることを免疫組織化学法で確認した。また、室傍核スライス標本を作製し、CRH細胞からグラミシジンパッチクランプやCa2+測定ができることを確認した。2.遺伝子改変マウスへの母体低栄養負荷モデルの作製:WNKによるKCC2リン酸化部位変異導入(疑似持続リン酸化)マウス(KCC2 T906E-T1007E)の継代繁殖に成功した。AgRP細胞選択的にGABA合成を欠失したマウス(AgRPCre/+-mCitrine/GAD67flox/flox)を作製するための、GAD67flox/floxマウスを入手し、繁殖に取り掛かった。母体低栄養モデルでは摂餌制限(-30%)を妊娠10.5-18.5日に行い、胎生期低栄養マウスモデルを作成した。野生型でも出生体重が有意に低下することを確認した。モデルマウス胎仔でAgRP細胞(mCitrine)、CRH細胞(GCaMP)の胎生期での発生を確認した。
2: おおむね順調に進展している
既知・新規HPA軸反応標識系の確立はAgRP-mCitrineマウスとCRH-GCaMP3マウスを交配し、AgRP細胞選択的にmCitrineを、CRH細胞選択的にGCaMPを発現するマウスを作出し、交付申請書に記載した「研究の目的」どおりに達成した。しかし、母体低栄養モデルでは、まずは非妊娠成獣での既知・新規HPA軸の低栄養への反応の確認を先行させたので、妊娠個体への負荷は次年度行う。母体低栄養/胎仔視床下部GABA-Clシステム変調モデルの準備として、KCC2 T906E-T1007Eマウスを確立し、胎生期低栄養マウスモデルの作製にも着手しているので、全体としては、おおむね順調に進展していると自己評価した。
1.遺伝子改変マウス胎仔脳の神経細胞の発生・移動の解析:AgRP-mCitrine/CRH-GCaMP3マウス胎仔でのc-fos発現を野生型と比較し、母体低栄養が胎仔GABAシステムを介して新規HPA軸と既知HPA軸に与える影響を確認する。AgRP-mCitrineマウス、CRH-GCaMP3マウスとVGAT-tdTomato tgマウスホモを交配し、Alexa-EdUによる細胞分裂アッセイを用い、脳室帯での皮質板細胞の発生(Alexa)、内側線条体原基でのGABA細胞の発生(Alexa/tdTomato)、第三脳室周辺でのAgRP細胞(Alexa/mCitrine)、CRH細胞(Alexa/GCaMP)の発生と続いて起こるこれらの細胞の移動を、GABAA受容体、グルココルチコイド受容体、CRH受容体との共存と移動の過程も含め評価する。2.母体低栄養/胎仔視床下部GABA-Clシステム変調モデルの解析:母体の低栄養の有無と仔のGAD67遺伝子ヘテロ欠損の有無の4群で脳組織を回収し、RRBS法で、次世代シーケンサー(成育医療センター)を用いて網羅的DNAメチル化解析を行う。モデルの出生後は里親に飼育させ、生後8週齢で社会的行動、認知機能、衝動性・注意機能、感覚運動系機能などの行動解析による評価を行う。また、脳波を記録してγ帯成分をパワースペクトラムで解析する。さらに評価終了後に屠殺し、1.で確認した影響の成長後を、視床下部、内側前頭皮質、大脳新皮質、海馬・扁桃体などの辺縁皮質で確認する。以上から、精神疾患病態フェノタイプとの整合性を評価する。
計画では物品費¥1,750,000・旅費¥350,000・その他¥200,000を計上し、成果発表と研究打合せにそれぞれ旅費がかかることを想定していたが、学会での成果発表の際に併せて研究打合せも行ったため、当初予定額よりも旅費が抑えられた。次年度使用額については、主に消耗品費や旅費として利用する。また、現在実験に使用している現有備品が老朽化しており、もしも不具合が生じて実験の遂行に支障が生じた場合は、その修理もしくは代替品の購入に要する費用の一部とする。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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