本研究の目的は、我々がこれまでに樹立した内在的に遺伝子変異を高発するマウス系統を利用し、マウス系統を継代して生きたマウス個体に遺伝子変異を蓄積させ、エピスタシス(多重な遺伝的変異の相互作用)による新たな生命デザインモデルマウスを開発することである。これにより、これまでに解析が困難であった量的形質や多因子疾患に関わる動物モデルの開発、遺伝子変異を明らかにすることが可能となる。 平成30年度は、内在的に突然変異を後発する2種類の遺伝子改変マウスを用いて、継代を重ねることで、マウス系統に突然変異を蓄積させ、どちらの遺伝子改変マウスが本実験モデルにおいて、有効であるかどうか、確認する作業を進めてきた。それぞれの遺伝子改変マウスについて、表現型スクリーニングを行うことで、可視的な表現型異常の出現頻度を解析した結果、2種類の遺伝子改変マウスともに、野生型マウスに比べて、高い頻度で表現型異常が出現することが明らかになった。さらに、それらの遺伝子改変マウスで蓄積された変異の総数と変異のスペクトラムを明らかにするため、それらの系統について、次世代シーケンサーHiseqを用いて全ゲノムシーケンシングを実施した。シーケンシング後のデータ解析は、既存の方法論では不十分であるため、変異検出のための新たなパイプラインの構築に取り組んできた。塩基置換型変異と微小な挿入欠失型変異については、正確に捉えるための解析系が構築できつつある状況である。今後、検証実験を行うことで、それらの系統にどのような変異が蓄積されたか明らかにしていこうと考えている。
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