研究実績の概要 |
ヒトの病態を再現するNASHマウスにSGLT2阻害薬を投与すると「脂肪組織のHealthy Expansion」とともに、肝臓では新規脂肪合成酵素あるいは炎症・線維化に関連する遺伝子群の発現の減少に伴って肝臓の炎症所見と線維化が抑制された。SGLT2阻害薬を投与したNASHマウスでは肝腫瘍数の減少と腫瘍の最大径は低下傾向が認められた(Sci. Rep. 8: e2362, 2018)。以上により、「脂肪組織のHealthy Expansion」に伴って脂肪肝のみならず炎症所見・線維化を伴うNASH肝癌の発症が遅延することが示唆された。 SGLT2阻害薬を投与した肥満マウスでは「脂肪組織のHealthy Expansion」が確認され、グルタチオン代謝が還元型に変化していた。一方、SGLT2阻害薬を投与した肥満マウスの精巣周囲脂肪組織では、細胞貪食に関連する遺伝子発現が亢進し、M1マクロファージに比較してM2マクロファージが相対的に増加した。更に、SGLT2阻害薬投与に対する飢餓反応としてケトン体の増加に伴ってマクロファージにおけるFGF15遺伝子発現の減少とPEPCKと脂肪合成関連遺伝子発現の亢進が確認された(Sci. Rep. 8: e16113, 2018)。以上により、「脂肪組織のHealthy Expansion」では、脂肪組織とマクロファージの相互作用において、脂肪組織における酸化ストレス活性が抑制され、マクロファージの形質変化が生じ、細胞死に陥った肥大化脂肪細胞に対する貪食活性が促進されていること、脂肪細胞において脂肪合成が促進されている可能性が想定され、これらにより炎症所見が軽度であるにもかかわらず「脂肪組織のHealthy Expansion」が認められることが示唆された。
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