冠動脈狭窄症の治療として広く実施されている心臓カテーテル治療では、冠動脈薬剤溶出ステント全盛期の現在でも未だ1割以上の症例で再狭窄が認められる。これはインターベンション療法の限界の一つであり、その診断ならびに予測支援に用いることが可能なバイオマーカーの開発は急務である。我々は薬物有害反応バイオマーカーの研究を行ってきた。平成14-16年度(厚生労働省、萌芽的先端医療技術推進研究事業)、平成15-17年度(厚生労働省、化学物質リスク研究事業)、平成17-19年度(厚生労働省、創薬基盤推進研究事業)、平成20-22年度(厚生労働省、創薬基盤推進研究事業)等、これらの研究によって薬物の適正使用に貢献すると考えられる複数のバイオマーカーを抽出し、国際誌に多数発表した。本研究では、これらの経験をもとに、新たに薬物溶出性冠動脈ステント治療の安全性予測バイオマーカーを開発する。 自治医科大学附属病院循環器内科に入院する患者のうちインフォームドコンセントの得られた患者から臨床検体として血液を採取した。回収した血液は速やかに遠心分離し、血清ないし血漿を分離した上、測定まで凍結保存した。これらの検体には詳細な臨床情報が付与されている電子カルテシステムと連動しており、必要に応じてその情報を取得した。回収した血液検体に付随する患者の臨床データベースを構築した。また、バイオマーカー探索するとともに、そのメカニズムを探索した。これらの結果より、冠動脈薬剤溶出ステントの有害反応バイオマーカーの候補が明らかになった。
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