研究実績の概要 |
本研究では昨年度までにドナー脾臓中のB細胞を分取してレシピエントへ輸注することによって、ドナー特異的に免疫寛容状態が達成されることを見出した。本年度は脾臓に含まれるB細胞以外の細胞分画についても同様に免疫寛容を誘導する機能があるか探索を行った。脾臓含まれる細胞のうち、T細胞の投与では皮膚移植片の生着延長効果は認められなかった。また、骨髄からGM-CSFを使用して分化誘導した樹状細胞を用いた場合でも皮膚移植片の生着延長は認められなかった。その他の細胞種についても現在寛容誘導能の有無を検証中である。 本研究の研究計画に基づき、免疫抑制剤投与下で長期生着後の皮膚移植片からiPS細胞の作製を行った。これまでにタクロリムスおよび抗CD4、CD8モノクローナル抗体の投与によって生着を維持した皮膚移植片からiPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞は免疫不全マウスへの接種によりテラトーマを形成し、三胚葉への分化を認めた。また内因性のOct4, Sox2, Klf4, c-Mycの発現には免疫抑制下のマウスの線維芽細胞から作成したiPS細胞と、無処置マウスの線維芽細胞から作製したiPS細胞の間で差はなかった。またこれらの細胞の増殖能についても差は認められなかった。今後次世代シーケンサーを用いてRNA sequenceおよびwhole genome sequenceを実施し、無処置マウス由来iPS細胞と比較して遺伝子発現、ゲノム状態等に差が無いかを検証していく予定である。加えて、移植片由来線維芽細胞から作製したiPS細胞を用いて免疫寛容源となりうる細胞を分化誘導する。この細胞を免疫抑制剤投与下にあるレシピエントマウスへ投与することによって、免疫抑制剤からの離脱もしくは使用量を減量し、移植片の生着維持が可能であるか検討する予定である。
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