研究課題
膵島移植は、ドナーの膵ランゲルハンス島を移植することによって生理的な血糖コントロールを提供するための、重症糖尿病に対する細胞治療法である。膵島移植をはじめとする移植療法は以前よりドナー不足の課題が指摘されてきたが、2010年の改正臓器移植法の施行により従前に比べドナーは増加し、膵島移植においてもドナー提供情報は少しずつ増加している。その一方、移植療法はドナーありきであり、待機患者がいつこの治療法の恩恵を受けれらるかは全く不透明である。よってヒト膵臓に依存しない、常時提供することが可能な新たなドナー源を確立することが要求されている。その有力な候補としてiPS細胞が挙げられる。現時点では、膵島に匹敵する機能を持つ細胞を作成する段階までには至っていないものの、iPS細胞からインスリン、グルカゴンといった内分泌ホルモンを発現する膵島細胞を作成する手法は確立されつつある(Nakashima R, et al. Genes Cells. 2015)。また、移植された膵島の多くは脱落するため、その多くを生着させることが治療成功の鍵となる。膵島が脱落する理由の一つは虚血であり、移植早期の血流回復が膵島の生着に大きく貢献することは我々のこれまでの検討で明らかになっている(Tsuchiya H, et al. Plos One. 2015)。本研究は血管を付帯させた膵島を開発すること、さらにiPS細胞由来の膵島細胞に血管を付帯させたいわゆる血管化膵島を開発することを目的とする。今年度はマウス膵臓から膵島を分離抽出し、これにマウス線維芽細胞、マウス皮膚微小血管内皮細胞とを共培養することでマウス由来の血管化膵島の作成が可能であるか検討した。ここまでに膵島表面に血管の形成が認められることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
膵島表面への血管付帯までは成功した。作成条件の検討、機能評価については今後進めていく予定である。
血管化膵島の作成法を確立し、その機能をグルコース負荷、糖尿病動物への移植実験等により評価していく。また、本研究は糖尿病における虚血脚の再血管化による血流回復にも応用できると考えられ、その方面に関しても動物モデルなどを使用して研究を進めていく予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
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