研究課題
肺の終末構成単位である肺胞は、ガス交換の場であると同時に、呼吸に伴う圧や容量の変化による機械的ストレスに常にさらされている。最近、人工呼吸による機械的ストレスが病態の増悪に大きく関わっていることがわかってきた。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の肺胞構造はその原因疾患や病期によって大きく異なっている。しかしこれまで、人工呼吸中のARDSの肺胞の動きをリアルタイムに可視化することはできなかったので、人工呼吸によって肺胞構造がどのように変化し、またそれらにどのような機械的ストレスが作用しているかは推測の域を出なかった。当該年度は、SPring8シンクロトロン放射光を用いて、調節人工呼吸下のARDSモデルマウスの肺胞メカニクスを可視化した。さらに人工呼吸の設定、特に一回換気量[TV]、呼気終末陽圧[PEEP]が肺胞メカニクスに及ぼす効果を検討した。その結果、ARDS肺では低レベルのPEEPは肺胞の虚脱を、また高レベルのPEEPは肺胞の過膨張を引き起こすことがわかった。また高容量のTVと低レベルのPEEPによる人工呼吸は肺胞構造の破壊を誘導する一方、低容量のTVと低レベルのPEEPによる人工呼吸は肺胞の虚脱を引き起こすことがわかった。さらに、これらのシンクロトロン放射光によるイメージングデータを用いて、ARDS肺の3D画像の再構築を行った。この3D画像を前年度の正常肺のものと比較すると、ARDS肺では気管支レベル、肺胞レベル肺の3D構造が大きく異なっていることがわかった。
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