研究課題/領域番号 |
17K19694
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
大石 久史 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30375513)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / リプログラミング |
研究実績の概要 |
インスリン転写を体外から非侵襲にモニター可能なスクリーニング系の確立:生体発光を用いて非侵襲的に繰り返し検出し,定量可能なスクリーニング系を構築する。これまでに、マウスインスリン1プロモーター下にルシフェラーゼ遺伝子が誘導されるレポーターマウス(MIP-Lucマウス)を作製した。平成29年度は、このマウスにβ細胞関連転写因子であるPdx1、NeuroD、Ngn3、MafA、MafBの 5つの遺伝子を、様々な組み合わせで遺伝子導入を行って、in vivo イメージングを行った。いずれの組み合わせでも、マウス肝臓領域から発光が観察され、体外から非侵襲で観察可能なことが明らかとなった。特に、Pdx1、NeuroD、MafAの3遺伝子の導入によって、強力にシグナルが観察され、実際、この3遺伝子による遺伝子導入が、最も強力にインスリン転写を誘導可能なことを確認し、スクリーニング系はほぼ確立はできたと考えられる。 スクリーニング系を応用したβ細胞変換因子の網羅的解析:上記3遺伝子を肝臓に導入したところ、インスリン発現は一過性で、誘導後数週間で肝臓細胞に戻ってしまった。また、明らかなこのグルコース応答性を認めなかったため、この2つの問題点を克服し、更なる効率的なダイレクト・リプログラミングを誘導するために、MIP-GFPマウスの肝臓に、上記3遺伝子を導入し、導入後1週、2週で、肝GFP陽性細胞のマイクロアレイ解析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、(1)インスリン転写を体 外から非侵襲的にモニター可能なスクリーニング系の確立、(2)スクリーニング系を応用し たβ細胞変換因子の網羅的解析、(3)マウス内にヒト肝臓細胞が生着したキメラマウスを使った、ヒト細胞のダイレクトリプログラミングの3点を予定している。平成30年度中に、(1)(2)を終え、現在、新規のβ細胞変換因子の同定に取り組んでいる。これまで、本来の膵臓 β 細胞に高発現するものの肝内インスリン発現細胞には発現が認められない 27 個の転写因子に絞り込みを終えた。平成31年度中に、27個のスクリーニングを行なってさらなる絞り込みを行い、(3)をスタートさせる。
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今後の研究の推進方策 |
本来、膵臓 β 細胞に高発現するものの肝内インスリン発現細胞には発現が認められない27 遺伝子の発現ウイルスを順次作製して、新規の β 細胞変換因子の同定を行う。また、Pdx1、NeuroD、MafAの3 遺伝子の導入効率 を上げて治療効果を延長するために、3 遺伝子をポリシストロニック mRNA として1つのウイル スベクターに挿入した構築を作製する。理論上遺伝子導入効率をこれまでの 3 倍にあげる ことが可能で、また複数の新規遺伝子を同時にスクリーニングすることが可能となる。また、マウス肝細胞をアポトーシス誘導後に、ヒト肝臓細胞を脾内注射することによって、マウス 内にヒトの肝臓細胞が生着したキメラマウスを作製する。そして、キメラマウスに対して、ストレプトゾトシン(STZ)を投与し て糖尿病を発症させ、 β 細胞変換因子の導入による治療効果判定を行う。野生型マウスを用いた STZ 誘導糖尿病に対して、 Pdx1、NeuroD、MafA 遺伝子の導入により、約 4 週間の血糖改善効果を認めており、新規の β 細胞変換因子を追加し、更なる治療効果の延長が認められるか、検証する。
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