研究課題
本研究の目的は腫瘍に浸潤した細胞障害性T細胞がどのようながん抗原を認識するT細胞レセプター(TCR)を有するか、TCRの配列決定、同定ならびに探索することを目的とする。TCRはa鎖とb鎖、あるいはg鎖とd鎖の二量体から構成され、前者の組み合わせからなるTCRをabTCR、後者の組み合わせからなるTCRをgdTCRと呼び、それぞれのTCRを持つT細胞はabT細胞、gdT細胞と呼ばれる。本研究においてabT細胞のa鎖とb鎖の塩基配列を決定する。a鎖は14番染色体、b鎖は7番染色体上に存在する。a鎖とb鎖の組み合わせにより、一つの抗原を認識することから、1細胞のT細胞のa鎖とb鎖の塩基配列を決定しなければならない。腫瘍に浸潤したT細胞は十分量単離することが可能であるが、T細胞を1細胞にクローニングしなければならない。理論上、FACS sortingにより1細胞にクローニングが可能であり、1細胞からa鎖とb鎖の塩基配列を決定することは可能であるが、1細胞から確実にDNAを抽出、塩基配列決定することは困難である。そこで、患者から得た貴重なT細胞から、確実にa鎖とb鎖の塩基配列を決定するために、単離したT細胞に山中因子を導入しiPS細胞化する。iPS細胞は無限増殖能を有することから、iPS細胞化したT細胞からコロニーをピックアップして容易にクローニングすることが可能となる。クローニングしたiPS細胞化したT細胞からa鎖とb鎖の塩基配列を決定する。iPS細胞化によりクローニングならびに塩基配列決定は非常に簡便化できる。
3: やや遅れている
マウス腫瘍に浸潤した細胞障害性T細胞に山中因子を導入することにより、iPS細胞を樹立することに成功した。また、健常人末梢血から得た細胞障害性T細胞に山中因子をHuman iPS Cell Generation All-in-One Vectorを用いてiPS細胞の樹立を試みたが、iPS細胞の樹立に成功したものの、得られたクローン数が著しく少なく、樹立効率はかなり低かった。
本研究の最終的な目的は癌患者の腫瘍に浸潤した細胞障害性T細胞からiPS細胞の樹立を行い、TCRの配列決定である。しかしながら、現状ではiPS細胞樹立効率が低く、腫瘍に浸潤した細胞障害性T細胞からのiPS細胞樹立は困難と考えられる。そこで、山中因子の導入方法ならびにiPS細胞の培養条件の最適化を行い、iPS細胞の樹立効率の向上を試み、最終的に腫瘍に浸潤した細胞障害性T細胞からのiPS細胞の樹立を目指す。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Front Oncol
巻: 7 ページ: 147
10.3389/fonc.2017.00149.
Nat Commun.
巻: 8 ページ: 702
10.1038/s41467-017-00768-1.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/intlexch/cancerimmuno/www/index.html