研究課題
長年、糖尿病患者の易感染性が問題となっている。糖尿病性(diabetes mellitus; DM)足壊疽では、軽微な外傷から感染により蜂窩織炎や壊死性筋膜炎を発症し、広範囲の足壊疽から時には大切断に至る。DM足壊疽における易感染性はよく知られており好中球の機能異常がその要因の一つとされている。しかし、その詳細なメカニズムは不明であり、好中球に対する治療方法もみられない。好中球は感染部位に遊走・集積し活性化される。本研究では、好中球の機能異常として、好中球にみられる特殊な細胞死である「ネトーシス(NETosis)」に着目し、その誘導メカニズムを中心に解析を行った。マウス皮膚潰瘍モデルの潰瘍部に真菌由来のα-マンナンを投与すると、潰瘍部に好中球が停滞し、治癒が遅延することを明らかにした。免疫組織化学的に、潰瘍部に停滞する好中球はネトーシスマーカーであるシトルリン化ヒストン(Cit H3)を発現していた。さらに、Western blotting解析においても、α-マンナン投与群において明らかなCit H3発現を認めた。さらにこの現象は、α-マンナンの認識に関わるC型レクチン受容体であるデクチン(Dectin)-2を遺伝子欠損させたマウスに作成した潰瘍部では消失することを確認した。以上の結果より、好中球の機能異常として、好中球にみられる特殊な細胞死であるNETosisがDM足壊疽をはじめとする皮膚潰瘍の治癒遅延に関与していること、さらにNETosis誘導に真菌感染が関与している可能性が導かれた。
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J Invest Dermatol.
巻: 139(3) ページ: 702-711
10.1016/j.jid.2018.10.015.