研究課題/領域番号 |
17K19717
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 教授 (10345291)
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研究分担者 |
岸田 晶夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60224929)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
半月板損傷に対する切除後欠損に対し、欧米では同種半月板移植が行われるが、抗原性残存、力学的強度低下などの課題が残る。我々はこれらの課題の解決手段として高静水圧印加処理を用いて半月板の脱細胞化が可能であることを検証し、その最適条件(30℃、1000MPaで高圧処理を10分間行った後、DNase含有溶液で3日間の核酸除去処理を37℃で実施)による脱細胞化半月板と、同種移植の従来法である凍結融解処理半月板を組織学的、生化学的、生体力学的観点から比較・検証した。 具体的には、新鮮ブタ膝内側半月板を用いて、脱細胞化半月板と凍結解凍(半月板を-80℃で冷凍後、37℃で2分間温浴し解凍)したものを、未処理群を対照とし、組織学・生化学・生体力学的に解析した。生体適合性についてはブタの背部皮下に脱細胞化半月板および凍結解凍半月板を移植し、移植後3、14、28日で組織を採取し組織学的解析を行った。脱細胞群ではHE染色像で核を認めなかった。safranin-o染色像では凍結解凍群、脱細胞群ともに未処理群と比較し染色性の低下を認めた。脱細胞群のdsDNA重量は未処理群、凍結解凍群と比較し有意に約1%まで減少した(P<0.05)。脱細胞群のGAG定量では凍結解凍群と同等であった。脱細胞化半月板の圧縮応力は、生理的な圧縮強度に関しては未処理群や凍結解凍群と比較し有意差は認めなかったが、overloadでの圧縮応力や繰り返し圧縮後の圧縮応力は脱細胞群で未処理群、凍結解凍群と比較し有意に低下した。半月板移植後の炎症細胞数に関して、脱細胞群は凍結解凍群より少なかった。以上より、脱細胞化半月板のほうが凍結解凍半月板よりも機械的強度に関してわずかに劣るが、免疫学的には優れていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の達成目標である動物への移植実験を施行し、脱細胞化半月板の生体内機能評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
高静水圧印加処理を用いた脱細胞化半月板に関して、組織学的、生化学的、生体力学的解析がまだ十分に行われていない。これらに対してpicrosirius red染色を用いたコラーゲン配列、コラーゲンの定量評価、応力緩和等に関する解析をさらに進める。また移植後の脱細胞化組織への細胞浸潤(再細胞化)がまだ未解明であり、生体内移植実験結果をさらに解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に脱細胞化半月板の生体内機能評価を実施し、2019年度には脱細胞化異種半月板移植の計画を進める予定であったが、解析結果が良好であったため、計画を変更して2018年度に発表を行ったため、2018年度に実施する解析に必要な物品購入で未使用額が生じた。
(次年度における未使用額の使用計画)このため、2019年度に脱細胞化半月板の解析をさらに進めることとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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